☆第三話☆
「・・・ひくっ、ぐすっ・・・。」
ずっと自分だけのものだと思っていた。けれど、それは現実ではありえない。エンディミオンは自ら選んだ妻をめとり、地球のキングとなる身だからだ。分かっていたけれど、胸が痛かった。
「プリンセス、どうなされたのです?」
聞き慣れた声が部屋に響いた。クンツァイトだった。彼は、自分の兄、エンディミオンの親衛隊のリーダーだった。
「なんでもないわ。大丈夫だから。」
そういう彼女の目は、泣き腫らして真っ赤だった。
「その顔で、ですか?」
不安そうに顔を覗くクンツァイトに嘘はつけなかった。
アースはゆっくりと話し始めた。エンディミオンの部屋にいた、見知らぬ女性の事を。
「・・・いったい誰なの?一緒にいて大丈夫な人なの?」
アースの顔は不安に満ちていた。クンツァイトは、そんなアースの顔をじっと見つめていった。
「大丈夫ですよ、プリンセス。その方は月の王国の第一王女、プリンセス・セレニティという方です。とても美しい方ですよ。」
それを聞いたアースは驚いた。たしか、ほかの王国の者との恋は、禁じられてるんじゃあ?と。
「・・・プリンセスは、恋をなされたことがおありですか?」
「うん、まあ・・・。」
言いながら、一瞬エリオスが頭に浮かんだ。
「恋をすると、相手の事がとてもいとおしくなるのです。あのお二人は、ともに相手を心の底から愛しています。そんな様子を見ると、愛し合うのをやめろ、と言えなくなるのです。もちろん、許された恋ではありません。けれど、そっとしておいて上げたいのです・・・。」
アースにはまだよく分からなかったが、なんとなくうなずいてしまった。
―☆―
そのころエリオスは、なにか不穏な空気を感じていた。
「お二人の身に、何か起こるのでは・・・?何も起こらなければいいが・・・。」
しかし、エリオスの思いも虚しく、邪悪な空気は広がっていくのだった。
―☆―
「クイン・メタリア様、もうすぐですわ。もうすぐ、全ては整い、王国は闇へと化すのですわ・・・。憎
( きプリンセス・セレニティとともに・・・。ククククク・・・。」)
一人の女性が、空を見てつぶやいていた。
続く