☆第二話☆
それから数ヶ月ほどたったある日、アースはエリオスにある質問をしてみた。
「エリオス、エリオスは成長してるの?」
あまりにとっぴな質問のためか、一瞬びっくりしていたようだが、すぐ答えてくれた。
「・・・わたしは、この星とともに生まれ、この星とともに成長していました・・・。けれど、ある日突然、全く成長しなくなったのです。びっくりしたわたしは、ずっと天に祈っていました。すると、天から青白い稲妻が、このエリュシオンに降り注いだのです。降り注いだ跡からは水晶がぐんぐんと生え、今のようになったのです。当時のキングは、ここに神殿を立てることに決め、わたしは一番奥にある大きな水晶の周りを祈りの間とし、祭司として務めることにしたのです。」
エリオスはここで一呼吸置き、また話し始めた。
「ある日、祈りの間で祈っていたとき、突然啓示を受けたのです。“エリオス・・・、祭司エリオス・・・。きこえますか・・・?”と。はい、と答えるとその声の主がまた話し始めました。“エリオス・・・。啓示が遅れてすみません・・・。わたしの言うことをよく聴きなさい・・・。あなたがまた成長を始めるのは、あなただけの乙女に会ったときです・・・。あなたはそれまで、その姿のままです・・・。わかりましたか・・・?”わたしは、声の主に聴きました。あなたはだれなのです?と・・・。すると声の主は、“今はまだ、時が満ちておりません・・・。時が満ちれば、わたしの姿と名前がおのずとわかるでしょう・・・。”そう言い終わると、声が聞こえなくなりました。そういうことなので、わたしはあれから全く成長しておりません。」
「ふーん、じゃあ、まだ“エリオスだけの乙女”っていうのには会ってないわけね?」
「はい、まだお会いした事はありません。」
じゃあ、乙女はわたしかもしれないんだぁ!と、少しうれしくなるアースだった。
―☆―
ゴールデン・キングダムの中にある、自分の部屋に帰ったアースはいろいろと考えていた。
(エリオスは、自分だけの乙女に会えば、また成長を始めるって言ってたわよね。エリオスはわたしに会ってから、まだ全く成長してないわ・・・。“乙女”っていうのは、わたしじゃないかもしれないんだ・・・。)
ぶるるっと頭を振って、考えるのをやめる。
「考えていても仕方がないわ。お兄様のところに遊びにいこっと!」
エンディミオンの部屋には、きれいなものや、珍しいものがたくさんあった。だから、アースはエンディミオンの部屋に行くのが大好きだった。
部屋に行ってみると、鍵がかかっていなかった。いつもはしっかりとかかっているのだが、今日は開いていた。
「・・・そーだっ!お兄様をおどろかしてやろ!お兄様のおどろいた顔ってどんな顔かしら?」
そんな事を思いつつ、そーっと扉を開け、物陰に身を潜ませる。そこからこっそりと中をのぞいてみる。しかし、そこにいたのはエンディミオンではなく、見知らぬ女の人だった。その女は、興味深そうに周りを見ていた。
アースは不審に思った。この部屋には、簡単には入れないはずであったからだ。
そのうち、話し声が聞こえてきた。
「エンディミオン、あなたはこんな素敵なところに住んでいるのね。」
「そう言ってもらえると光栄だ。・・・お茶はいかが?セレニティ。」
「あ、ありがとう。・・・うわぁ、おいしい・・・。ジュピターでもこんなに美味しく入れないわ。」
どうやらエンディミオンとセレニティという人の会話である。この会話は、どう聞いても恋人同士の会話だ。
アースは、呆然とした表情で部屋を出て行った。まさか、自分の兄に恋人がいるなんて思ってもみなかったからだ。