☆序章☆
「お兄様ぁ!」
たたたたっと走ってくる一人の少女・・・その人影は、プリンス・エンディミオンの妹君、プリンセス・アースだった。
「お兄様、あのね、ゴールデンキングダムのずっと奥深くにぃ、小さな神殿があるのご存知ぃ?」
腰より少し上まで伸びている黒く美しい髪が、サラサラとゆれている。時折キラリと光る黒いカチューシャは、エンディミオンからの贈り物である。
「ああ、知っているよ・・・。けれど、そこにはキングと祭司と巫女しか入れないはずだ。アース、もしかして勝手に中へ入ったのか?」
優しかったエンディミオンの顔が、見る見る険しくなってゆく。
「そ、そうだったの!?・・・お兄様ぁ、そうとは知らず入ってしまったわ・・・。もうこれから行かないから、許してくれる?」
もちろん、本人は知っていて入ったのだが、そこは嘘と演技でごまかしている。けれど、こんな演技にだまされるはずがないのだが、本人はそれに気付いていない。
「まあ、これからぜったい行かないと約束するなら、目をつぶっといてやる。ゆびきりしような。」
そういって指を出すエンディミオン。(妹には弱かった・・・。)
「うん!」
満面の笑みで指を出すアース。もちろんこれも演技である。
『指きりげんまん、指切ったらハリセンボンのーます!指切った!』
こんな日々が、ずっと続くと思ってた・・・。ずっとずっと、永遠に・・・。