4.レイの想い
 
 待ち合わせの時間。
 早く来過ぎたかな―――と思っていた衛は、既に来ていたレイに手を振った。今日は珍しく、衛の方からレイを誘ったのだ。そのせいか、レイはいつにも増して機嫌がよかった。
「今日は嬉しい。衛さんから誘っていただけるなんて。」
 待ち合わせの公園のベンチに座っていたレイはそう言うと、隣に座るのを促すようにベンチを半分空けた。衛もその様子を見て隣に座った。
「実は、君に相談があるんだ。」
「相談って?」
 レイは衛に微笑んだ。
「……おだんごの事なんだけど。」
 その瞬間、レイの笑顔が消えた。
「あいつ、今どうしてる?」
 衛は、レイの表情が曇ったことに気が付かなかった。
「この前、俺……。」
「衛さん!」
 衛の言葉を遮るようにレイは言った。
「この前衛さんに会ったとき、私嬉しかった。」
 下を向いたレイは、拳をギュッと握った。
「だって……、だって私は、衛さんの事が好きだから。」
 衛は驚いた。五つも年下の女の子が、自分に好意を持ってるなんて思ってもいなかったのだ。しかし、衛を見つめながら、レイは続けた。
「けど、衛さんはうさぎの話しかしない。今日だって、せっかく衛さんの方から誘ってくれたのに……、衛さんはうさぎの事が好きなのよ!!」
 涙をぼろぼろと零すレイ。
「そ、そんなこと……。」
 無いとは言い切れなかった。いつも彼女のことが気になっていた。五つも年下の女の子。喧嘩ばかりしてたけど、本当は優しくて、友達思いだという事も知っている。しかし、それを‘恋’と言っていいのだろうか……。
 落ち着いた様子で、レイは笑顔で呟いた。
「衛さんの頭の中は、うさぎでいっぱいなのね。」
 そして、衛をベンチに残して、レイは公園を去っていった――――――。