1.友達

 

 うさぎは、今まで戦ってきた時の記憶が無い。うさぎだけではない。今までの戦いの中で出会った人々は、お互いの記憶が無くなってしまったのである。本来なら、記憶が戻って戦士として新たな敵と戦っている彼女達だが、何かの拍子に記憶が戻らなくなってしまった。しかし、5人の戦士達は普通に出会って、記憶がある時と何ら変わりない生活を送っている。つまり、今この瞬間こそが、彼女たちが望んでいた平和な世界なのである。
「ごめん!ごめん!」
 今日は放課後、みんなでクラウンに行く約束をしていた。しかし、決まってうさぎは遅刻をするのである。
「遅〜い!!一体何してたの?うさぎちゃん。」
 大きなリボンを髪に結んだ女の子―――美奈子が、うさぎが来るのを待ちに待っていた様子で言った。
「いや〜、今日遅刻しちゃってさぁ、春だにずーっと怒られちった。」
 テヘッと愛想を振り撒いてうさぎは言った。
「あれっ?レイちゃんは?」
 いつもならこういう時、一番に自分を怒ってくれるレイがいない事に気が付いた。
「あら、うさぎちゃん聞いてなかったの?レイちゃん急に用事を思い出したんですって。」
読みかけていた本をパタンと閉じて亜美が言った。
「用事〜?一体何なのよ!レイちゃんの用事って。」
「お・と・こ!かもしれないんじゃな〜い?」
 ムフフッと片手を口に置いた美奈子が、亜美に詰め寄ったうさぎの前に現れた。
「おとこか〜、センパイに会いたいなぁ・・・。」
 と、両手を絡めて自分の世界に入り込んでいる大きな少女―――まこと。
「まこちゃん、おーい?・・・ダメだわ、こりゃ。」
 もはや彼女をこっちの世界に戻すのは不可能である。彼女自身が気づくまでの間5・6分は放っとくに限る。
「レイちゃんの用事・・・。何だろう?気になるなぁ。」
 うさぎは思った。
「しょうがない、今日は中止にしよう。ただでさえ学校の違うレイちゃんを抜かして、みんなで遊ぶのもアレだし。なっ、みんな。」
 ようやくこっちの世界に戻ってきた()まことがそう言うと、みんなそれぞれ家に帰っていった。