迷い込んだ乙女達


あらすじ 帝国華撃団花組のメンバーが、光武を点検中にブースに突然時空のゆがみが発生し、光武ごと21世紀の東京に飛ばされ、東京湾上に落下して・・・

第一章 帝劇での悪夢、そして第三管区海上保安本部からの一報


 ここは、帝国華撃団本部のある、大帝國劇場。この地下に帝国華撃団の誇る光武が極秘裏に保管され、異常事態のあったときはすぐにここから、地下鉄を通って出動する。最近はめったに降魔が出現しないとあって、光武の保守のため、花組の人たちは紅蘭だけでは点検しきれないため、総出で光武の保守にあたっていた。
「全く、なんでこの私が光武の点検なんかしなければいけないのですの??」
「しょうがねえだろ。人手が足りねえんだからよ」
すみれの愚痴にカンナが素早く反応した。
「すみまへんな〜、すみれはん。ここのところ動かしてへんかったから、大分傷んでる箇所があるんや。直すには人手があまりに足らへんのですよ」
紅蘭は謝るようにすみれに言った。
「紅蘭さんの頼みじゃ仕方ないですわね」
「おいおい、あたいの一言じゃ足らね〜って言うのか!!」
カンナはすみれに食ってかかる。
「まぁまぁ、お二人とも、あまり喧嘩をなさらないように・・・」
さくらが割って入った。
「また、始まったのね・・・」
マリアが食料を外から持ち込んできて、ため息をついた。
「大神中尉がいないと、こうもだめかしら・・・」
「まあ、マリアーいつものことじゃない」
アイリスがマリアに言った。
「さ〜て、おおかた修理も終わったさかい。みなはん、一回乗ってみてくれへんか??」
「さて、いっちょ久しぶりに光武の感触を楽しむか!」
紅蘭の号令にカンナは少し嬉しそうにして光武に乗り込んだ。
全員が乗り込んだ所で、光武のテストが行われた。ところが突然・・・。
「な、なに!?周りがゆがんでいく・・・」
「なんや、どうなってるんや!!」
「さくら〜、恐いよ!!」
「なにがあったの??」
「紅蘭さん、これは一体・・・」
全員なにが起こったか分からなかった。
「どうしたの??何かあったの!?」
東大寺副指令からの連絡だった。
「副指令!!緊急事態です!!副・・・!!」
そういって、マリアからの交信が途絶えた。東大寺が地下のブースに行ったときは、大神のを除く光武が姿を消していた・・・。

 横浜にある、海上保安庁第三管区海上保安本部。関東地方の海の安全を一手に引き受けている、日本で一番忙しい管区本部である。とそこに、東京海上保安部から第一報が入った。
「こちら東京海上保安部、『はるみ』。第三管区横浜本部、応答できますか??」
「こちら、第三管区横浜本部。『はるみ』どうしましたか??」
「こちらはるみ。1134(午前十一時三十四分)、東京湾アクアライン川崎人工島付近の海上に、見たことのないロボットを発見、至急応援を要請する」
「こちら横浜本部。はるみ、どのようなロボットですか?」
「こちらはるみ。まるで、旧型の戦車に手と足をくっつけたようなロボットです」
「こちら横浜本部。ただ今より、横浜本部と横須賀保安部より応援を出します。はるみはそのまま待機して下さい」
「こちらはるみ。了解しました」

「・・・ここは、どこ??」
一番早く気が付いたのは、さくらであった。
「みんな起きて下さい!!みんな!!」
「さ、さくらはん、大丈夫でっか??」
「紅蘭!私は大丈夫」
紅蘭がさくらに一番早く声を出した。
「いてて・・・。ここは海??」
カンナがいち早くここが海の上ということに気づいた。
「東京湾のど真ん中ですわ!!」
すみれが絶叫する。
「どうしよう・・・」
アイリスはすでにパニック状態だ。
「アイリス、落ち着いて!!」
マリアがアイリスを落ち着かせようとした。
「S.O.S、こちらさくら、帝劇本部応答せよ!!」
さくらが必死に帝劇に緊急連絡をいれた。しかし入らない。
「紅蘭、無線は正常??」
「壊れてたら、みんなと今連絡でけへんやん。ということは無事」
「どういうことなの??」
みんな、完全にパニックになっていた。
「みんな、外を見て!!」
マリアが叫んだ。
「船!?」
「ジャパンコーストガード・・・、直訳すると日本沿岸警備・・・」
アイリスが言葉少なに言った。
「蒸気船じゃない!!」
紅蘭が驚嘆した。
「こちら、東京海上保安部巡視艇『はるみ』。そこのロボットの操縦者。すみやかに出てきなさい。そこの操縦者すみやかに出てきなさい!」
「巡視艇??どういうこと??海上の警備は海軍の管轄じゃ・・・」
マリアが疑問を呈した。

 『はるみ』の中では、ロボットから変わった周波数の電波が出ていることに気づき、分析が始まっていた。
「船長。周波数は、昔旧日本陸軍が東京近郊で使っていた無線の周波数と一致しました」
「よし、周波数を予備の無線機で合わせてみろ」
「了解!!」
無線担当の保安官は、予備の船舶無線機の周波数を、ロボット達が使っている周波数に合わせてみた。
「こちら、さくら!!帝劇応答せよ!!」
船内にさくらの悲鳴が流れた。
「これはえらいこった。早く助けないと・・・」
船長はロボットの中で起こっているただならぬ事態に、海上保安官の勘が働いた。
「彼女と話をさせてくれ」
船長が無線担当官に頼んだ。
「どうぞ」
無線担当官が船長に無線マイクを渡した。
「こちら、海上保安庁東京海上保安部巡視艇はるみの船長です。ロボットの操縦者の方、応答できますか?」
船長は操縦者達にやさしく無線を取り始めた。

「どういうこと??あの船から無線が入ったの??」
マリアが紅蘭に聞いた。
「そのようや。周波数がばれたんや」
紅蘭が渋い表情をした。
「私があの船と交信します」
さくらがみんなに言った。
「さくら、大丈夫か??どんな相手か分からないのに」
カンナが心配そうに話した。
「少なくとも悪い人たちじゃなさそうだわ」
さくらはカンナにそう言って、無線のスイッチを押した。

「こちらはるみ。聞こえますか??」
はるみの船長は必死に操縦者に交信を続けた。
「船長、横浜本部と横須賀保安部から応援が来ました」
「あのロボットを攻撃しないように伝えてくれ」
船長は無線担当官に指示をした。
「了解」
無線担当官は、他の巡視艇に攻撃をしないよう伝えた。
「こちらはるみ。応答せよ」
3回目の試みで、さきほど悲鳴を上げた少女から交信があった。
「こちら、光武さくら専用機。東京海上保安部巡視艇はるみへ。緊急事態です。救助を要請します」
「こちらはるみ。光武さくら専用機。救助要請を了解します。あと4つの中には人は乗っているのですか??」
「こちらさくら。各一名ずつ乗っています」
「こちらはるみ。各ロボットに一隻ずつ近づけますから、下についたら出てきて下さい」
「こちらさくら。分かりました」
他の巡視艇ははるみの指示で光武のそばに巡視艇を近づけ、乗組員を助け出した。そして、この後セーラー戦士が出てこようとは、海上保安庁ではまだ見当もついていなかった。

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