☆第六話☆



アースは走った。
この現実から逃れたかったから。

どちらを信じればいいの?
エリオス?

それとも

ベリル?



選べない。
どちらも大切な人だから。

エリオスの自分への好意が、うそだったとは信じ難かった。優しくて、きれいな目のエリオス。
あの人が、自分に嘘をつくとは考えられない。

でも、ベリルもいい人だ。
…お兄様はいまいち信用してないようだけど。
でも最初は嫌っていたクンツァイトたちも、今ではすっかりベリルを信用している。






どうやって
どうやって、決めればいいの?


アースは気づいた。
これは、自分の力で考え、解決しなければならないことなのだと。


いつもはお兄様やお父様、お母様に相談したり、エイオルに占ってもらったりした。
けれど今回は言えない。誰にも言えない。





体が震えた。
そんなこと、したことなかったかもしれない。
自分でなんて。


…なんて非力なのだろう、私は。
こんなことも、自分で出来ないのね。
夢の中のように、ただもがくだけは嫌よ。





力が、欲しい。
アースは強く願った。



何でも出来る、お兄様のように。
知恵や勇気、優しさが欲しい。




―☆―




「…時は、近い。」

そっとベリルは呟いた。

「王子の御心はまだ、あの忌々しい女に囚われたまま…。もう、強硬手段しかないようね…。」

それ以外は、全てうまくいっている。
あとはあのプリンセスが、どう動くか。まぁ、どうせたいしたことは出来やしないだろう。結局は、誰もかれも私以外のものを全て疑い、私についてくるのだから。


〔油断するな。ベリル。〕
「クイン・メタリア様…!」

不意な声で驚くベリル。
まるで、心の中を読まれたようだった。

〔なにか、この地球国に太古からあった力が動き始めている…。あのエリオスとかいう者ではない。もっとずっと力強いものだ。〕
「それが、我々の邪魔になると?」
〔分からぬ。しかし、絶対に油断は禁物だぞ。よいな。〕


声が聞こえなくなったあと、ベリルは急いで水鏡を覗いていた。
しかし、別に不穏な動きは見られなかった。


(あのお方の間違いであるといいが…。)


成功させなければ、いけないのだ。
自分のためにも、そして、地球国のためにも。

ベリルは固くそう思っていた。