巨大魔法陣
激しい揺れは、治まることを知らなかった。
マグニチュードに換算して、楽に「7」はあるだろうと、アースが予測した。地脈を操ることのできる彼女であるからこそ、瞬時に判断できることだった。
建物が倒壊している。
ゲームセンター“クラウン”のあるビルは、今のところ無事だが、このまま揺れが続くようなら倒壊する可能性は充分にある。
通常の地震より、揺れている時間が長い。通常の地震ならば、とっくに揺れは治まっていなければおかしい。
「アース! 何とかできないのか!?」
地脈を操れる彼女ならば、地震を治めることも可能かと思い、ジュピターが喚くように訊いた。
「さっきからやってるわ。でも、駄目なのよ。これは、普通の地震( じゃないわ」)
ひどく落ち着いた声で、アースの返事が返ってきた。アースとしては冷静に状況を判断したつもりなのだが、その口調にジュピターは少々不服だった。混乱気味の自分が、咎められたような気分にさせられてしまう。
衛から陰ながらアースの面倒を見るように頼まれているジェダイトは、そのふたりのやりとりを見て苦笑するしかない。アースの言葉遣いは、どうやら生まれ付いての癖のようなものなのらしい。すぐに変わるとも思えなかった。年齢の割に冷静沈着なアースは、何かに付け熱くなりがちなジュピターとは、馬が合わないようだった。
(プリンセス・マーズ!)
上空から、カラスの姿のフォボスとディモスが飛来する。
(港区一帯に、巨大な魔法陣が描かれています。この揺れは、そのためだと思います)
カラスの姿では言葉を話すことができない彼女たちは、マーズにテレパシーで報告する。
「魔法陣ですって!?」
マーズは色をなした。港区一帯に描かれた魔法陣を操るとなると、並の術者ではできない。
「魔法陣!? 港区一帯に!?」
サターンも驚きの声をあげる。フォボスとディモスのテレパシーは、マーズ以外の者にも届いていた。
十番病院に向かう彼女たちの中にあって、マーズだけが足を止めた。
「みんなは、先に行って!」
「分かった、後で指示をくれ!」
立ち止まったマーズとジュピターが言葉を交わす。マーズひとりをその場に残し、全員はそのまま十番病院に向かった。
「じゃあ、揺れているのは、この辺りだけなの!?」
その場に残されたマーズは、上空のフォボスとディモスを見上げた。
(そうです)
フォボスのテレパシーが返ってきた。彼女たちはカラスの姿のまま、上空から偵察してきたのだ。この揺れが尋常でないと判断した瞬間、彼女たちは迅速に行動したようだ。
「中心点は分かる?」
(十番病院です)
マーズの質問に、即座にディモスが答える。
「十番病院ですって!?」
マーズの眉が跳ね上がる。仲間たちが向かった場所だ。
(十番病院を中心にして、港区一帯を完全に覆うような形で、巨大な魔法陣が描かれています。これ程の魔法陣を制御するには、かなりの魔力を必要とするはずです。並の術者ではないと考えられます)
「分かったわ」
しばし考えを巡らした後、
「ふたりも変身して! しばらく上空から監視を続けて!」
(分かりました)
フォボスとディモスは、セーラー戦士に変身する。
「これはいったい………!?」
十番病院に到着した彼女たちは、その惨状に息を飲んだ。
無数の“毛むくじゃら”が、気が狂ったように暴れているのである。
午前中ということもあって、診察に来ていた患者も多く、また職員や入院患者を含めると、かなりの人数が十番病院に集まっていたことになる。その中で、無数の“毛むくじゃら”が狂ったように暴れ回っているのである。
そこは、さながら地獄絵図のようであった。
“毛むくじゃら”の鋭い爪の犠牲になった罪もない人々が、辺り一面で呻いている。息絶えている者は今のところ見受けられないが、このままでは時間の問題であろうと思えた。
「セーラームーン( がいれば………!」)
ジュピターが悔しげに呻いた。セーラームーンがいれば、彼女の銀水晶のパワーで、傷ついた人々を回復させてあげることができる。
「ジュピター( ! あたしがやってみます!」)
意を決したように言ったのは、セーラーサンであった。確かに彼女なら、太陽の独鈷杵を使って、ある程度の回復をさせることはできるだろう。しかし、それは気休め程度でしかない。太陽の宝珠でもあれば、銀水晶と同等の回復が望めるのだろうが、それは叶わなかった。
「あたしもセーラーサン( をサポートします」)
申し出たのはサターンだった。サターンの再生能力も優秀だった。ふたりの力を合わせれば、あるいは銀水晶の回復力に匹敵する能力を発揮できるかもしれなかった。
「ふたりとも、頼む」
この状況では、ふたりに頼ざるを得ない。ジュピターはふたりを順に見て、頷いた。
プルートが去ってから、リーダーシップはマーズが取っていた。カロンは年長者だが、チームにはまだ馴染んでいないし、戦闘経験も浅い。マーズかジュピターのどちらかがリーダーシップを取る必要があった。ジュピターは最前線で戦うタイプの戦士である。とても全員に目を配るようなことはできない。ごく自然に、マーズがリーダーシップを取るようになっていた。だが、この場にはマーズはいない。必然的にジュピターがリーダーシップを取らなければならない。ジュピターが最前線で戦えないこの状態はつまり、彼女たちチームとしての戦力ダウンを意味していた。
「やっと来たか!!」
前方から野太い声が聞こえてきた。自衛隊の日暮隊長だった。額に汗を浮かべ、周囲を気にしながらも、日暮隊長は駆け寄ってきた。ふたりの部下を連れている。
「早く何とかしてくれ! “毛むくじゃら”の正体を知っている以上、あいつらを殺しちまうわけにもいかない。麻酔銃を使ってはいるが、限界がある!」
怒鳴るように言う日暮隊長の手には、大型のライフルが握られていた。しかし、弾は彼の言うように麻酔弾なのだろう。
「これだけ大量の“毛むくじゃら”は、いったいどこから出現( てきたんだ!?」)
ジュピターが問う。
「入院していた女の子たちだよ! 一斉に意識を取り戻したと思ったら、“毛むくじゃら”に変身して暴れ出したんだ!」
「あたしたちが救出した女の子たちか!?」
「そうだ!」
叫びながらも、視界に飛び込んできた“毛むくじゃら”を、日暮隊長は麻酔銃で仕留めていた。
「魔法陣のせいね!?」
断定的にカロンは言った。
「まほうじん!?」
聞き慣れない言葉に、日暮隊長は眉間に皺を寄せた。
「分からなければ分からないでいいわ!」
突っ慳貪にカロンは言う。前方から“毛むくじゃら”が、大挙して押し寄せてきた。これ以上、おしゃべりしている暇はないようだ。
「あとは、セーラーサン( に期待するしかないわけか………」)
ジュピターが呻いた。事情が変わったのだ。負傷者の回復も当然だが、“毛むくじゃら”に変貌した女の子たちを、再び元に戻してあげる必要がある。それには、セーラーサンの能力が不可欠だった。だが、
「せっかく元に戻しても、また“毛むくじゃら”に戻ってしまうんじゃ………」
アースの懸念は、当然のことだった。一度、元に戻った彼女たちが、この魔法陣の影響で再び“毛むくじゃら”化したのだとすると、魔法陣を消滅させない限り、彼女たちは元には戻らないということになる。
再び大地が揺らいだ。と言うより、空間そのものが揺らいだという表現の方が正しい。
十番病院の病棟にも亀裂が走る。
「空間をシールドできれば………!」
ジュピターが悔しげに呻く。通常空間を時間ごとシールドしてしまう超次元空間を発生させることができるは、仲間でもプルートとマーキュリーのふたりだけである。しかし、ふたりはこの場にはいないのだ。空間を時間ごと封鎖して、被害を最小限に食い止める超次元空間は使うことができない。
「この揺れはおかしい! やっぱり、魔法陣の影響!?」
大地の振動の微妙な変化を感じたアースは、この揺れは地核の変動によって起こるものではないと断定していた。
「まずい! 被害が増える一方だ!」
ジェダイトが舌打ちをする。襲ってきた“毛むくじゃら”に、延髄蹴りを叩き込む。
「このままじゃ、埒が開かないぞ!」
“毛むくじゃらの”一体に手刀を浴びせながら、オペラ座仮面が喚いた。
「ルナ! 何が起こっているんだ!?」
地上のゲームセンター“クラウン”から、血相を変えて元基が司令室に降りてきた。
“クラウン”の内部の壁にも亀裂が入っているらしい。尋常ではないと判断した元基は、事態を把握するために、すぐさま地下に降りてきたというわけだ。
たったひとりで、司令室を目まぐるしく動き回って各モニターをチェックしているルナは、元基が降りてきたことに気付いた様子はない。半ば気が動転した状態で降りてきた元基だったが、ひとりで司令室を切り盛りしているルナの姿を見て、すぐに平静さを取り戻していた。
元基は無言で空いているシートに腰を下ろすと、ヘッドホンを当てる。
ようやくルナが気付いてくれた。
元基はニカッと笑うと、ルナに向かって親指を突き立てた。
「聞こえるか、みんな!?」
通信機から、元基の声が響く。
「魔法陣は十番病院を中心に作られている。ルナの計算だと、どうやらエナジーが中心に向かって集中しているらしい。気を付けてくれ!」
「何!? ふるちゃん兄さんの声!?」
通信機から予期せぬ人物の声が聞こえてきたため、ジュピターが驚きの声を上げた。
「キミたちのサポーターのひとりとしては、この状況を黙ってみているわけにはいかないからな。司令室に降りてきている」
「魔法陣の中心に、その魔法陣を作った本人がいるはずよ! そいつを捜し出して!!」
元基の声に続いて、ルナの声が聞こえてきた。
「了解!」
ジュピターは返事をすると、十番病院に目を向ける。“気”を集中させる。敵の位置を探るためだ。これ程の巨大な魔法陣を作る相手ならば、おそらく相当の魔力を持つ魔術師だろう。
「魔法陣を作った相手は、あたしが捜すわ!!」
ようやくマーズが追い付いてきた。絶妙のタイミングだった。
“気”を集中させるために無防備となったマーズを、ジュピターとカロンが援護する。
十番病院の上空に向かって、セーラーサンとサターンがジャンプした。それをジェダイトがサポートするように、身を躍らせた。
「行くわよ、サターン( !」)
セーラーサンが、太陽の独鈷杵を振り翳す。サターンもサイレンス・グレイブを構えた。
「我らの邪魔はさせない!!」
巨大な殺気を背後で感じた。セーラーサンとサターンを守るように、その殺気に向かってジェダイトが突進した。
絶世の美女がいた。ワルキューレだ。
ジェダイトがエナジー・ボールを放った。ワルキューレはそれを躱す。そのワルキューレの背後から、もうひとつの影が、ジェダイトに向かって矢のように突撃してきた。
「なに!?」
その場にふたりいることに気付かなかったジェダイトは、一瞬対応が遅れた。
「貴様には、借りがあったな!!」
殺気立った表情で突進してくるその男に、ジェダイトは見覚えがあった。
「貴様はあの時の!?」
「俺はジバルバ! 貴様さえ出てこなければ、俺の計画は上手くいったものを………!!」
憎々しげにジェダイトを睨むその男は、赤城悟郎だった。赤城もスプリガンの部下だったようだ。
「俺は貴様を倒すために、強化手術を受けた! 見るがいい、俺の力を!!」
ジバルバと名乗った赤城は、全身にパワーを漲らせた。
「ぐおぉぉぉ!!」
ジバルバの雄叫びと共に、全身の筋肉が肥大する。筋肉が爆発的に膨れ上がる。
「筋肉ダルマ如き、俺の敵じゃない!」
ジェダイトは目まぐるしく動き、ジバルバの周囲から衝撃波をお見舞いした。
「痒いわ!!」
全てが直撃したが、ジバルバには傷ひとつ付けられなかった。
「マジで戦わないと、やばいな………」
ジェダイトは舌打ちした。その視界に、ワルキューレと交戦中のサターンが飛び込んできた。凄まじい光線技の応酬である。閃光で目が眩み、まともに見ていることができなかった。
「パワーの戻ったサターンと互角に戦っているだと!? パワーセーブして戦っているとはいえ、あの女手強い………」
セーラーサンの姿は見えない。
「よそ見をしていていいのか!?」
間近にジバルバが迫ってきていた。鋭いパンチが唸りをあげて、ジェダイトに襲い掛かる。
するりと躱した。
背後に回り込む。延髄に蹴りを叩き込んだ。
「その程度じゃ、俺には勝てない」
ジェダイトはジバルバを挑発する。
ジバルバは血走った目で、ジェダイトを見据えた。“気”が膨れ上がった。更に筋肉が肥大する。それに伴って、体も巨大化している。三メートル近い巨人に変貌していた。
「でかくなりゃ、いいってもんじゃないだろうに!」
戦闘技術に関して言えば、ジェダイトとジバルバとでは大人と子供程の差があった。いくらパワーがあっても、闇雲に攻撃していたのでは、ジェダイトに掠り傷ひとつ付けることはできないだろう。
「くそっ! いい加減、キリがないぞ!!」
何体めかの“毛むくじゃら”に麻酔弾を叩き込んだ日暮隊長が、唾を吐き散らしながら喚いた。麻酔弾の残りも少ない。
セーラー戦士たちは、逃げまどう人々の誘導を優先させているために、上空のセーラーサンを援護できない。彼女はサターンとともに、ワルキューレと交戦中だ。彼女をサポートしていたはずのジェダイトは、身の丈五メートルの巨人と激戦を展開していた。
「仕方がない! 俺がお嬢ちゃんを援護する!」
上空を見上げたオペラ座仮面に、
「待って! 今、フォボスとディモスが来るわ! セーラーサン( の援護は、ふたりに………」)
言いかけたマーズは、途中で言葉を切った。
「な、なに!? この感じ!?」
新たに襲ってきたきた感覚に、さすがのマーズも動揺を隠せなかった。
空間が小刻みに振動している。
「さっきの揺れ方と違うぞ!」
ジュピターも異常をキャッチしていた。大地ごと揺れていた先ほどの振動とは、明らかに違う揺れだった。今度のは、空気が振動していると思えるものだった。
ゴゴゴゴゴ………。
振動が激しくなった。まともに立っていることすらできない。
閃光が走った。
「なっ!?」
上空でジバルバと戦闘していたジェダイトは、思わず息を飲んだ。十番病院の周囲に、複数の光の柱が発生している。天に向かって、光の柱が一直線に伸びる。
ジバルバとの戦闘で、いつの間にか十番病院から離れてしまったジェダイトは、外側から光の柱を見ていた。
セーラー戦士たちの殆どは、光の柱の内側にいるはずだった。光の内側で閃光が走る。サターンとワルキューレだ。ふたりの決着も、まだ付いていない。
「死ねぇ!!」
茫然しているジェダイトに、ジバルバが襲い掛かる。
「貴様に構っている暇はねぇ!!」
凄まじい炎の渦が、ジバルバを飲み込んだ。既に七メートル程に巨大化していたジバルバだったが、一瞬のうちに灰となった。悲鳴すら上げている時間はなかった。
光の柱が更に増えた。それに伴って、大気の振動が激しくなる。もはや、十番病院上空に接近することはできない。
「くそぉ! 何て、こった!!」
既に、ジェダイトに為す術はなかった。
「ル、ルナ! これは!?」
司令室でもこの現象は確認できた。元基は全身を小刻みに震わせながら、ディスプレイを凝視していた。
「魔法陣だわ! しまった! こっちの魔法陣が本命だったのよ!!」
ルナの声は、既に悲鳴だった。港区全体を囲うように作られた巨大な魔法陣は、実は十番病院に張り巡らされた小規模な魔法陣の囮だったのだ。いや、もしかすると魔法陣を二重にすることで、大掛かりな何かをしようとしているのかもしれなかった。無数の光の柱は、その前兆ではないのか?
光が渦を巻いた。ディスプレイの画面の光度を越えた。何がどうなったのか、もはや確認できない。
数分後、だしぬけに光が収まった。静寂を取り戻した十番街が映っていた。
戦闘は終了していた。
しかし、その場にいるはずのセーラー戦士たちや、“毛むくじゃら”の姿はなかった。傷付き、倒れている人のみが、十番病院にいたのだ。いや、その表現は適切ではない。十番病院があったはずのところ、と言った方が正しい。病院の建物自体が消えてしまったのだ。
残されたのは病院内外にいた怪我人や戦闘での負傷者。そして、入院していたはずの患者だった。健康で無傷な者は、誰ひとりとして残ってはいなかった。
「してやられたって、感じだな………」
救助に現れたレスキュー隊の活躍を遠目に見ながら、ジェダイトは歯軋りをした。その横で、フォボスとディモスは項垂れるしかなかった。
「やつらの目的は、初めから病院に収容されている“毛むくじゃら”を回収することにあったんだ………」
ジェダイトは、そう推理した。でなければ、こんな大掛かりな魔法陣を仕掛ける意味がない。
「一端は見捨てていた“毛むくじゃら”が、再び必要になったってことですか?」
フォボスが質問した。
「だとしか考えられんな………。急に人材が必要になったのか、あるいは………」
「あるいは?」
「初めから回収する目的で、しばらく放置していたのか………」
ジェダイトは今し方閃いたばかりの推測を口にしながら、この推測の方が正しいのではないかと考えていた。
「いずれにせよ、彼女たちや“毛むくじゃら”以外に、医師や看護婦たちも消えている。恐らく、ある程度健康な者たちは例外なく消えてしまったと考えるしかない」
“毛むくじゃら”の回収が目的なら、それだけを行えばよいわけなのだが、現実にはセーラー戦士たちや自衛隊の面々も消えてしまっているのである。人材が必要になったのだろうという推測は、あながち的外れではないと思えた。
「待てよ、確かマスターの乗った飛行機も………」
ジェダイトの脳裏で、再び何かが閃いた。衛の乗ったジェット機の墜落、その後の調査での乗員乗客の消失。そして、マスコミの取材陣の失踪。
「全て繋がりがあると考えるべきか………」
ジェダイトは右手で顎を撫でた。ブラッディ・クルセイダースの恐るべき陰謀に、鳥肌が立つ思いだった。
「魔法陣による強制転移ね………」
ジェダイトから十番病院の様子の報告を受けたルナは、がっくりと肩を落とした。まさかこういう事態になるとは、予想だにしていなかった。為す術など何もない。
「どこへ転移させられたって言うんだ?」
「分からないわ」
狼狽している元基の呟きは、ルナへの質問ではなかったのだが、反射的にルナは答えていた。大きくかぶりを振り、ディスプレイの画面を見つめている。
「無事でいれば、必ず連絡が入るわ………。それまでは、あたしたちにはどうすることもできない………」
無事でいてほしいという願いを込めて、ルナは言った。その言葉は、自分で自分に言い聞かせるようでもあった。