隊長さんの意外な正体


「ごめん。あたしが援護できなかったばっかりに………」
 湿布薬の臭いを漂わせながら、うさぎは誰にともなしに呟いた。あのあと、十文字によってタワーランドの医務室に運ばれたうさぎは、捻挫した右足首を治療してもらっていた。真っ白い包帯が痛々しい。
 後片付けを例によって自衛隊に任せたセーラー戦士たちは、素早く変身を解くと、避難していた人々の中に紛れ込んだ。
 既に避難していた舞とくりちゃんを見つけ出すと、まことたちは二手に分かれた。舞たちに陽子がさらわれたことを悟られないようにするためだった。陽子と学校の違う舞やくりちゃんは、夏休み中であっても、うさぎたちがセッティングしなければ陽子に会う機会はない。今日さえ凌いでしまえば、陽子がさらわれたことを気付かれる心配はなかった。
 陽子はレイやほたるたちT・A女学院組と先に帰ったことにして、まことたちは治療中のうさぎを待って、タワーランドから帰ってきた。
 十番街に戻ってきた彼女たちは、舞とくりちゃんと別れ、ゲームセンター“クラウン”の地下司令室で、待っていたレイたちと合流したのだ。
「あの場合。仕方ないよ」
 落ち込むうさぎを慰めるのは、いつもの如くまことの役目だった。陽子がさらわれたのは、何もうさぎひとりの責任ではない。責任があるとすれば、あの場にいた全員に言えることだった。
「十文字はどうしたの?」
 レイが聞いてきた。十文字は、治療中のうさぎにつきっきりだったのだ。嫌らしい目つきで、うさぎの胸元を見ていたとまことから聞いている。
「プールで別れた」
「簡単に引き下がったの? あいつ………」
 レイが驚くのも無理はない。十文字という男は、それは女性にしつこいらしい。T・A女学院でも噂になっているという。気位の高いお嬢様たちは、幸い被害にはあっていないようだった。十文字は確かにいい男だが、一見して遊び人だと分かる風体をしていた。お嬢様の相手をするには、少々役不足らしかった。
「けっこうしつこかったよ」
 まことが言う。どうやらまことが、十文字を追い返すことに一役かったらしい。
 話が途切れた。レイがちらりとルナを見る。ルナに意見を求めたのだ。
「セレスの目的はなんなのかしら………」
 ルナは考え込む。セレスが、陽子ひとりをさらった理由が分からない。今までは無差別にエナジーを奪い、無差別に女性をさらっていたのである。それなのに、今日のセレスは明らかに陽子ひとりを狙っていた。
「あたしたちを倒そうとすれば、できたはずなのに、それもしなかったわ」
 不意打ちを食らったレイとまことは、反撃すらできずに、一方的にやられてしまった。気を失っていた彼女たちに、とどめを刺せるチャンスは幾らでもあったはずだ。
「セレスはあたしたちの正体を知っていたわ。余裕のつもりかしら………」
 ほたるは意見を求めるべく、レイとまことに視線をやった。タキシード仮面らしき、助っ人が入ったことは、皆には話さなかった。タキシード仮面だという確信がもてなかったし、何よりもうさぎに遠慮したためでもある。あの影がタキシード仮面のものだとしたら、衛が日本に帰ってきていることになる。亜美からの国際電話で、衛が日本に帰ってきているらしいということは、既にうさぎは知っていたし、彼女自身の口から、ほたるたちも話の内容は聞かされていた。次の日にせつなが確認の電話を亜美にしていたのを、横で聞いていたほたるは、うさぎ本人より、状況は知っているつもりだった。だから、尚更うさぎの前ではタキシード仮面のことは言えなかった。
「こちらの正体を知っていたことから推測すると、君たちの焦りを誘う作戦かもしれない。くれぐれも、迂闊な行動だけはしないようにすることだ」
 アポロンの意見は正しいと思えた。彼女たちの友人の陽子をさらうことで、彼女たちの焦りを誘い、判断を誤らせる作戦かもしれない。いざとなれば陽子を人質に、彼女たちを誘い出すこともできる。
「レイさんとまことさんの怪我の方は?」
 もなかがふたりを気遣った。先の戦いで、ふたりは手酷くやられている。セーラーサターンのヒーリング能力で、かなり回復はしているだろうが、ダメージが完全に癒えたとは思えなかった。
「大丈夫よ。ほたるのおかげで、大分回復してるから………」
 そう答えるレイだったが、その表情からはかなりの疲労が感じられた。この連日、かなりの強敵と戦ってきている。イズラエル戦では惨敗し、レプカラーン戦でも体力のギリギリのところで戦っていた。そろそろ疲れも溜まってくるだろう。
「姉さんの仕事が、もうじき一区切りつくそうです。そしたら、長期の休暇を取るつもりらしいから、ふたりの負担も減ると思います」
 ほたるは言った。確かに今までに比べると、ふたりに掛かる負担が大きすぎる。守らなければならないうさぎを、前面に押し出して戦うことはできないし、ほたるはパワーダウンしている。もなかに関しては戦力外だ。この先せつながいなければ、かなりのつらい戦いになるだろうことは、想像に難しくない。メンバーが揃わないことが、これほど辛い戦いになるとは思ってもみなかった。
 過去も幾度となく、巨大な敵を相手に戦ってきた彼女たちだったが、その時には戦力が充分に揃っていた。今回のような不充分な状態ではなかったのだ。
「すみません。あたしが能力を発揮できないばかりに………」
 もなかが項垂れるのも無理はなかった。今の自分は足手まといでしかない。太陽の宝珠をなくしてしまった彼女は、ヒーリング能力すら使えない。
「ごめん。わたし、そんなつもりで言ったんじゃ………」
 今の話は、もなかの前では避けるべきだったと、ほたるは後悔した。これでは、自分は嫌みな女になってしまう。実際、自分もパワーダウンしているのだ。本来の能力の十分の一も発揮できていない。
「セーラーヴァルカンのことを考えると、もなかちゃんの能力が眠ったままってことは、逆にいいことなのよ。彼女の覚醒は、イコール、セーラーヴァルカンの封印が解けると言うことだもの………。ブラッディ・クルセイダースに加えて、セーラーヴァルカンまで現れたら、あたしたちだけではどうしょうもないわ」
 ルナがいいフォローをしてくれた。実際その通りだった。もなかの転生の理由が、それである以上、彼女の能力が眠っているのは、実際はよいことなのだ。
 セーラーヴァルカンの封印が解かれた場合に、全力でセーラーヴァルカンに戦いを挑むこと。そして、セーラーヴァルカンを封印ではなく、こんどこそ完全に倒すことが、彼女の転生してきた理由なのだ。セーラーサンが完全に覚醒していないということは、未だにセーラーヴァルカンの封印が守られているという証なのだ。
「失われた太陽の宝珠も、未だ見つけられない………」
 アポロンは悔しげに呻く。その太陽の宝珠が、陽子とともに敵の手に落ちていることなどは、もちろん知る由もない。

 結局、このあとこれといった意見は出ず、そうそうに会議を打ち切りにした一同は、隠し通路から外に出た。今日は元基がゲームセンターの仕事を休んでいるため、ゲームセンター内の秘密の通路は使わない。他人にでも見つかったら、それこそ大変なことになってしまう。
「じゃあ、あたしは帰ります。姉さんが戻ってきたら、今日のことを報告しておきます」
 ほたるは仲間たちに別れを告げ、足早に帰宅していった。家の方向が同じであるまことも、ほたると一緒に帰宅した。
「うさぎちゃん。足は大丈夫なの?」
 片足を引きずるようにして歩いているうさぎを、ルナが足下から気に掛けた。
「うん。軽い捻挫らしいから、一週間もすればよくなるだろうって、タワーランドのお医者さんが言ってた」
「骨に異常がなくて、よかったですね」
 もなかが言う。
「生まれつき、骨は丈夫なのよ。それに、鍛えられてるからね」
 うさぎは力瘤を作ってみせた。そんなうさぎに冷ややかな視線を送ったレイは、
「あんた、運だけは、最高レベルだねんね」
 いつもの如く、軽く嫌みを言ってやった。
「どういう意味よ、レイちゃん!」
「深い意味はないわ」
 噛み付かんばかりのうさぎに怖じることもなく、レイはプイとはそっぽを向いた。うさぎが頬を膨らませてレイに詰め寄るが、そんなことにいちいち対応するレイではない。軽くあしらって、その場を切り抜けようとする。もちろん、うさぎが益々頬を膨らませる、お決まりのパターンだ。
「あれ? あの人………」
 もなかが前方を指し示した。無精髭を生やした厳ついおじさんが、一枚の紙切れらしきものを持って、なにやら通行人に話しかけている。紙切れを見せられた通行人は首を傾げると、そのまま歩き出してしまった。無精髭を生やしたおじさんは、また別の通行人を呼び止め、紙切れを見せている。
「自衛隊の隊長さんじゃない………。何してるのかしら………」
 普段着でいるためか、その印象こそ違うが、間違いなく自衛隊の隊長だと思えた。タワーランドでの事故処理は、もう済んだのだろうか。
 うさぎたちは、立ち止まって無精髭の隊長のことを見ていた。やがて隊長は、うさぎたちの方にやってきた。
 額に汗を浮かべている隊長は、自衛隊の制服の時とは全く別の印象を受けた。疲労感を感じさせているその表情からは、何か切羽詰まったような感じがした。焦りが伝わってくる。
 自衛官の制服時のような、あの豪快な感じは影を潜めていた。私服の姿の隊長は、二‐三歳老けて見える。
「すみません。こんな女の子を見かけませんでしたか?」
 隊長は、一枚の写真をうさぎたちに見せた。先程紙切れのように見えたのは、どうやらこの写真のようだった。
 もちろん、隊長は変身前のうさぎたちのことを知らない。今自分が話しかけた相手が、セーラー戦士だなどとは、夢にも思わないだろう。
 隊長からしてみれば、通りすがりの女子高生風の女の子たちに声を掛けたにすぎないのだ。
 写真には、ひとりの女の子が写っていた。高校生くらいの女の子だ。
「あっ!」
 その写真を見た瞬間、三人は揃って声をあげた。知っている顔だったのだ。
「陽子ちゃんじゃない!?」
 うさぎは食い入るように写真を見つめた。レイももなかも、驚きを隠すことはできなかった。どうして陽子の写真を、自衛隊の隊長が持っているのだろうか。
「娘を知っているのですか!?」
 隊長の声を大にして、うさぎたちに詰め寄った。
「え!? 娘ぇ!?」
 更に驚かされた彼女たちは、写真と隊長の顔を交互に見比べた。
「よ、陽子さんが隊長さんの娘ぇ!? う、うそぉ!!」
 もなかが、迂闊にも素っ頓狂な声をあげた。
「隊長って、何故それを………?」
 うさぎとレイが、慌ててもなかの口を押さえたが、隊長は怪訝そうな顔で彼女たちを見ている。もなかはうさぎ以上におっちょこちょいである。足下のルナとアポロンが頭を抱えている。
 隊長は、まじまじと彼女たちの顔を見つめた。
「まさか、お嬢ちゃんたち………」
 どうやら感づかれてしまったようだ。
 うさぎは笑って誤魔化そうとする。その後ろでは、もなかがレイのげんこつを食らっていた。
「仕方ないわね………。こうなったら、隊長さんに協力してもらった方が、のちのちのことも考えると得策なんじゃない?」
 足下から、ルナの声が聞こえた。

 うさぎたちは隊長の自家用車で、火川神社へと向かった。司令室という考えもあったが、まだ隊長をあそこに入れるわけにはいかなかった。“クラウン”の地下に司令室があるなどということは、まだ教えるべきではないと思えたからだ。だから、火川神社にしたのだ。火川神社であれば、他人に聞かれてしまうようなことはないだろうというのが、レイの意見だった。それに、陽子は火川神社に、下宿という形で泊まり込んでいたという理由もあった。
 隊長が本当に陽子の父親なら、聞きたいことは山ほどあるのだ。
 火川神社の鳥居を潜ると、奥で境内を掃除をしている優一郎が見えた。優一郎はレイたちに気が付かないのか、こちらを見ようとはしない。
 レイも優一郎には声を掛けずに、真っ直ぐと社務所に向かった。
 本堂に行っているのか、レイの祖父の姿も見えなかった。優一郎も戻ってくる様子はない。話をするのには都合がよかった。
「車の中でも聞いたが、俺は未だに信じられん。お嬢ちゃんたちがセーラー戦士だとはね………」
 隊長は大袈裟にかぶりを振る。レイの部屋に通された隊長は、差し出されたお茶も飲まずにうさぎたちの顔を順に見ていった。
「おまけにしゃべるネコだなんて、これじゃあまるで漫画だよ」
「信じられないのは無理もありませんよ」
 レイは微笑を浮かべて言った。あまりにも神秘的な微笑だったため、隊長は一瞬見とれていたが、すぐに真顔になった。
「本当に娘はここにいたのか?」
「疑うの?」
「疑ってはいないが、信じられないだけだ」
「同じことだと思うけど………」
 レイの言葉に、隊長は苦笑するしかない。
「美童さんは幼い頃両親を亡くして、親戚の家に預けられていた言っていたわ。あまり居心地はよくなかったらしいけど………」
「そうか、あいつがそんなことを………」
 隊長は窓の外に目をやった。もう、陽はすっかり暮れていた。優一郎が社務所に戻ってきたらしい物音が聞こえる。レイの名を呼んでいる。
 レイは部屋の戸を開け、優一郎に自分の部屋にお客が来ていることを告げると、再び戸を閉めた。
 隊長はしばしを目を瞑っていたが、やがて意を決したように話し出した。
「あいつが言ったとおり、俺はあいつの本当の父親じゃない。あいつは三歳の頃、俺の家の前に捨てられていたんだ」
「捨て子?」
 確かめるように、うさぎは訊いた。隊長はゆっくりと頷く。
「俺はこんな男だから、なかなか嫁の来てがなくてな。あいつを拾ったものの、正直言ってどうしようか迷ったよ。俺に子育てなんかできるのかってな。だけどあいつは、子供のくせに、俺にしがみついて離れなかった。まるで、自分を捨てないでくれと懇願しているように………。結婚もしてなかった俺だったが、あいつを養女にして育てることにしたんだ」
「待って! それではつじつまが合わないわ。美童さんは、両親を事故で亡くしたと言っているのよ」
 レイが怪訝な顔をする。話が噛み合わない。
「これはもう、信じてもらうしかないんだが………」
 隊長は数秒間目を伏せると、レイの吸い込まれそうなほどの神秘的な瞳を、見つめ返した。「半年ほど前のことだ。あいつは交通事故に遭って、生死の境を彷徨った。奇跡的に命は取り留めたが、その代償として、あいつは全てを失ってしまった」
「記憶を無くしたってこと?」
 レイは聞き返す。横で訊いていたうさぎの脳裏に、衛の顔が過ぎった。衛も幼い頃交通事故に遭い、その事故で両親と自らの記憶を失ったのである。陽子は、その衛に似ていた。
 隊長は、ゆっくりとした動作で頷いてみせた。
「だが、それだけじゃなかったんだ」
「それだけじゃなかった?」
「人格そのものが変わってしまったんだ。まるで別の人間にでもなったかのように………」
「そんなことって、ありえるの?」
 レイは隊長にではなく、ルナに尋ねていた。ルナならば、明確な答えを出してくれそうだったからである。
「ありえないとは言えないわ。でも、ごめんなさい。あたしにも分からない」
 ルナはかぶりを振るだけで、レイが期待したような答えを導いてはくれなかった。衛や亜美の得意分野なのだが、生憎とふたりともこの場にはいない。
「そして、あいつは三ヶ月前に、ふっといなくなってしまった」
ブラッディ・クルセイダース(やつら)にさらわてたのね。きっと………」
 うさぎが口を挟んだ。レイはうさぎの意見を肯定するように頷いた。
「そして、逃げ出してきた」
「でも、変じゃないんですか? 陽子さんはレイさんのことをクラスメイトだって、分かっていたし、普通にT・A女学院に通っていたわけでしょう? 人格が変わったのなら、みんなが気付くはずですけど………」
 T・A女学院は、高等部からの募集はしていない。現在高等部に在籍している院生は、すべて中等部から進級してきた者たちである。陽子自身に変化があれば、友人は気付くはずである。ましてや、人格が変わったというならば尚更だ。
 もなかの抱いた疑問は、そのままレイの疑問でもあった。
「あいつはT・A女学院には、もともと通ってはいなかった」
「うそ!」
「嘘ではない。考えても見ろ。俺にそんな収入があると思うか?」
 T・A女学院は都内有数のお嬢様学校である。学費が高額なのである。学院生の殆どは、財閥や政界の有力者の令嬢である。レイとて、父親が政界の有力者で、学費は全て父親からの援助で賄っているから、何の心配もなくT・A女学院に通ってはいるが、神社を経営している祖父の財力では、とても通えるものではない。ほたるもT・A女学院に通ってはいるが、彼女とて、せつなの収入だけでは通いきれるものではない。高額の収入がある、はるかとみちるからの仕送りがあるので、通えているのだ。
「確かに、今年のクラス替えで初めて美童さんと同じクラスになったけど、以前は見かけなかったような気もするけど………」
「美童というのも、本当の名前ではない。俺の名は、日暮大悟。あいつは、日暮陽子」
「わ、分かんなくなっちゃったぁ!」
 うさぎが頭を抱えてしまった。分からないことだらけである。
「何者かが、美童さんをT・A女学院に送り込んだ………?」
「何のために?」
 レイの呟きに反応したルナが、反対に訊いてみた。
「分からないわ」
 だが、レイは首を横に振った。
「T・A女学院内で、何かが起こっていると考えるべきだな、レイ。最近学院内に、知らない顔が増えたということはないか?」
 今までじっと皆の話を聞いていたアポロンが、ようやく重い口を開いた。
「確かに、今学期になって知らない顔の学生が増えたような気がするわ。それに、知らない顔のシスターも増えた………」
「T・A女学院を調べてみる必要はあるな」
 アポロンは意見を求めるべく、ルナに視線を向けた。
「何かとてつもない真実が隠されているような気がするわ。T・A女学院のことといい、陽子さんのことといい、分からないことが多すぎるわ」
 ルナはまるで人間のように、顎に手を当てて考えるような仕草をする。ネコにしては不自然な動作だが、もともとが人間だから仕方がない。
「陽子は何故、T・A女学院に学生として通っていたんだろう。そんな必要が、どこにあったんだ………。陽子はさらわれたんじゃなかったのか………」
 日暮隊長の疑問は、大きな難問だった。さらわれたはずの陽子が、T・A女学院の生徒として普通に生活していたことが納得できない。よしんば、さらわれたのではなかったとしても、説明できるものではない。
「彼女を助け出さないと、この問題は解決しない」
 アポロンがぽつりと言う。その通りだと思えた。
「俺も協力する。こちらで掴んだ情報は、全てお嬢ちゃんたちに流す。だから、お嬢ちゃんたちも何か分かったらことがあったら、俺に教えてくれ。もちろん、お嬢ちゃんたちがセーラー戦士だなんてことは、俺の胸の中だけにしまっておく。お嬢ちゃんたちもさらわれる可能性はあるんだ。気を付けてくれ。そして、陽子を、娘を助けてやってくれ」
 訴えるように言う日暮隊長の目には、光る物があった。