Visio® のソリューションとは、実物をモデル化したシェイプと、図面に対して特定の制御を行うプログラムの組み合わせです。Visio ソリューションには、通常、マスタシェイプ用のステンシルがあります。ユーザーはこのマスタシェイプを図面ページにドラッグ&ドロップするだけで、直接描画することなく図形を作成できます。また、ソリューションでは、新しい図面の作成時に利用できるテンプレートを提供する場合もあります。テンプレートには、タイトル ボックス、ロゴ、フレームなどのシェイプを含めたり、図面縮尺、図面のサイズ、印刷時の用紙サイズを定義しておくことができます。これに対し、プログラム (ソリューションの Visio ファイルに含まれる Microsoft Visual Basic for Applications コードまたは外部のスタンドアロン プログラム) は、図面の作成や分析、図面と外部のデータ ソースとの情報のやりとりに使用します。ユーザーがシェイプを正しく使用できるように、シェイプにオンライン ヘルプを設定することもできます。
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フィールド セールス オートメーション : Visio ソリューションの例
モデル化とは、ソリューションの対象となる領域にある実物を模したオブジェクトを使って、特定の集まりを表すことで、問題の分析や解決に役立ちます。モデル化の対象として、部署の組織図、オフィスレイアウトを計画するときの机や椅子の配置図、顧客に販売するネットワークの構成図、集積回路の状態図などがあります。モデルは実物を真似ているため、モデル化を行うことにより、ユーザーにわかりやすいソリューションを設計し、開発できます。
適切に設計された Visio ソリューションでは、シェイプがモデルの対象となる領域のオブジェクトに対応しています。このようなソリューションで図面を作成することにより、モデルが構築されます。シェイプは、正確なモデル化とグラフィカルな表現ができるように設計されていますが、特定の属性を変更してよりわかりやすい表現を行うこともできます。
たとえば、部署の組織編成を考案している場合は、モデルの対象となる領域は部署で、社員は領域中のオブジェクトとなります。このモデルを表す図面は、誰が誰の配下にあるかを表す接続線 (コネクタ) とボックスで構成される単純な組織図となります。
ユーザーは、社員間のコネクタとボックスの位置を変更することで、部署の再編成計画を立てることができます。
また、新しいオフィスビルに移転するための設備計画を立てているとします。モデルの対象となる領域はビルで、社員が領域内のオブジェクトとなりますが、家具やコンピュータなどもオブジェクトとして考える必要があります。このモデルを表す図面は、各社員の位置とそこに設置される家具や機器を示すオフィスのレイアウト図となります。
ユーザーは、社員、家具、コンピュータの各シェイプをドラッグすることで移転計画を作成することができます。
Visio のシェイプを再利用可能なコンポーネントとして設計することにより、ユーザーは描画ツールを使用せずに図面を作成できます。Visio は、モデルとなる領域内のオブジェクトに真似たシェイプを使用できるだけでなく、正しいモデルを開発できるように設計されているため、モデル化に最適なツールです。
例を以下に示します。
Visio の図面は、単にモデルの一部を表すことを目的としている場合が多く、最終的な製品として作成されることはあまりありません。Visio ソリューションは、データを自動的に抽出できるように作成されている図面で最も役立ちます。たとえば、プロセスをモデル化したソリューションでは図面はプロセスの手順を表しますが、各プロセスの処理にかかる経費を知りたいという場合も考えられます。
プロセス チャートからのデータの抽出
Visio 図面に十分なデータを追加すると、その図面は完全なモデルを表すことができますが、一貫性が必要な図面が多数ある場合、モデルの一部を単一の共有データベースに保存できます。このデータベースには、たとえば食器棚、カウンター、電気器具などの仕様や、プロセスの入出力データなどを保存できます。
オブジェクトは、モデルの規則に従って動作させる必要があります。特定の規則に従うことにより、わかりやすい図面を作成することができます。たとえば、コネクタやボックスが重なりあっている組織図は、ボックスが一定間隔に置かれ、コネクタがその周りを適切に迂回するように配置されている組織図に比べると、かなりわかりにくいものになります。
しかし、作成したシェイプの外見が整然としているだけでは十分とは言えません。表しているデータが正しいかどうかをチェックできるようにシェイプを設計し、図面を作成する必要があります。たとえば、移転計画では、全社員に机を 1 つずつ割り当てる必要があります。複数の社員に対して机が 1 つしかなかったり、1 人の社員が複数の机を持つことはあまり考えられません。
Visio ソリューションでは、図面から抽出したデータを分析し、モデルの規則に従っているかどうかを確認できます。全社的な組織変更によって、複数の部署が再編成されるような場合があるとします。このような場合、各部署の組織図に記されている管理体系を自動的に抽出し、全体的な組織構成に組み込んで、一貫性を確認できるようなソリューションを作成します。たとえば、直属の上司を複数持つ社員がいないか、再編成案に登場していない従業員は意図的に組織から外された従業員なのかどうかなどを確認できます。
Visio ソリューションでは、図面を分析してモデルの規則に従っているかどうかを確認できます。
Visio ソリューションによって、実物をモデル化し、モデルからデータを抽出してそのデータをチェックする方法を理解するために、セキュリティ システムを設計、販売する企業の営業活動を支援するソリューションを例にとって考えてみます。
従来の方法では、営業員が受注の取れそうな企業を訪ね、どのようなセキュリティが必要か話し合い、システムを設計します。現在の値段などが記載されているカタログで部品を調べ、紙と鉛筆を使って提案するシステムの草案を作成しながら、相手先に詳細を説明します。営業員は、相手先におおよその金額を伝え、オフィスに戻ってから正式な提案の準備をします。オフィスでは、描画プログラムを使って草案を清書し、各部品の価格を調べて入札に備えて合計し、提案書を作成します。相手先が提案を承認すると、今度は顧客との契約書を用意し、設置作業の手順を考えます。
すべてが計画通りに進めば、従来の方法でもうまくいきます。ただし、草案となる図面で、肝心な部品が抜けていたり、部品どうしの接続が誤っていたり、部品が接続されないままになっているような場合を考えてみてください。正式な図面が草案と異なる場合もあります。営業員のカタログが古く、提案したシステムに現在では手に入らなくなった部品が使われていたり、値段が上がっていたりすることも考えられます。このように、各段階の図面を人が作成すると、客先での設置に至るまでの各プロセスの段階で間違いが生じる可能性が高くなります。また、順調に進んだとしても、各段階ごとに図面を用意し、そのつど間違いがないかチェックし、それを修正するのでは時間がかかります。
このプロセスを自動化した Visio ソリューションでは、営業活動は次のようになります。営業員は、Visio と営業支援ソリューションがインストールされたラップトップ コンピュータを持って、企業を訪ねます。どのようなセキュリティが必要か話し合いながら、営業員は独自に開発したステンシルから Visio の図面上の正しい設置位置にシェイプをドラッグし、提案するシステムの図面を作成します。セキュリティ システムのシェイプは、接続ポイントとコントロール ハンドルによって、簡単に正しく配置できるように設計されています。ステンシルは定期的に更新されるため、古い部品が含まれていないかを心配する必要はありません。
Visio ソリューションで設計するセキュリティ システム
セキュリティ システムのシェイプには、部品番号などのデータを保存するカスタム プロパティがあります。ソリューションには、部品の現在の価格やその他の詳細情報のデータベースと、シェイプとデータベースを同期させるプログラムが含まれています。このソリューションには、次のような利点があります。
この Visio ソリューションを使うと、相手先でもオフィスでも、営業員の作成した図面に基づく提案書、契約書、設置作業の手順書、請求書を作成できます。Visio ソリューションでは、短時間でより正確な図面を作成できるため、営業員はより多くの顧客と仕事を進めることができます。