セーラームーンVSキューティーハニー


第二章 横浜・パラダイス学園での出会いと対決


 亜美が有栖川宮記念公園で男達に襲われてから初めての土曜日、うさぎたちは衛、みちる、はるか、せつな、ちびうさ、ほたるを巻き込んで、横浜に向かっていた。
「なんで、移動能力を使わないで、こんなボロっちい電車で行くわけ??」
ちびうさが不満そうにうさぎに言った。
「あのね〜、一応移動能力を使えば体力削られるんだから、文句言わないの!」
うさぎがちびうさに反論した。
「まぁまぁ、うさぎちゃん、ちびうさちゃん、電車の中で喧嘩はやめてよ」
レイが慌てて止めに入った。
 ここは東急東横線渋谷駅。セーラーチームは東横線とみなとみらい線を使って、横浜に行くことを決めていた。というよりは、ほたるが「みなとみらい線に乗ってみたい」と言い出したので、東横線での移動に決まったのが実のところ。
〔まもなく、特急元町・中華街行きが発車いたします。ドアを閉めます、ご注意下さい〕「東横線に乗ったのなんか、何年ぶりだろうな」
衛が素っ気なく言った。セーラーチームら全員、定刻前に電車に乗っていたので、うさぎが閉まりかけたドアに電車の中にいながら挟まれると言うアホらしい光景を見ながら、衛が発した言葉だった。
「全く、外から駆け込んできた人が挟まれるならまだしも、乗ってて挟まれるなんて何やってるのよ、うさぎ!」
ちびうさは呆れながらうさぎに言った。他の乗客達もくすくすと笑っている。
「いや〜、お恥ずかしい・・・」
さすがのうさぎも恥ずかしかったようだ。
「それにしても結構年期の入った電車だわね。これで、近代的なみなとみらい線に直通する電車とは思えない」
せつなが、理系関係者らしい言葉を発した。
「いいんじゃない?だから運賃が安いんだろうから」
まことがせつなに言った。
〔ご乗車ありがとうございます。この電車は、みなとみらい線直通、特急元町・中華街行きです。途中、中目黒、自由が丘、武蔵小杉、菊名、横浜、みなとみらいに停車いたします。次は中目黒、中目黒です。地下鉄日比谷線と途中通過駅ご利用のお客様はお乗り換えです。〕
いかにも電車に乗っている感じの車内アナウンスが流れる。だが、ルナやアルテミス、ダイアナにとっては過酷な電車旅である。
「やっぱ狭いな・・・。籠に入っていると言うことは」
アルテミスはかなり不服そうにつぶやいた。
「電車内で、あなたたちを肩の上に乗せて乗ると言うことはできないんだからしょうがないでしょ?」
美奈子はアルテミスに注意した。
「ダイアナ、帰りは人間になって帰りたいです〜」
「あぁ、その手があったわね・・・。でも、運賃三人分はきついからね・・・」
ちびうさはダイアナに言った。皆さん自腹で来てるため、3匹の猫が人間になったら、三人分の運賃など払っている余裕がない人もいるわけで・・・。
「そしたら、私が払ってあげますよ。ストレスで倒れられたらかなわないからね」
はるかがため息をつきながら、ちびうさに話しかけた。
「そうしてもらえると助かります・・・」
早くも電車に酔ったような声を出しているルナがはるかに言った。
その間、ほたると言えば、電車の外をぼーっと眺めながら、電車旅を楽しんでいるようだった。なお、みちるはすでに心地よい電車の揺れで夢の中にいた。
「はるかさん、みちるさんは電車に乗るといつもこうなの??」
うさぎがはるかに聞いた。
「いや、そもそも一緒に電車に乗った事なんてなかったから、電車で寝るということは今日この場で初めて知った・・・」
はるかもみちるの寝顔を見ながら、うさぎに話した。
「まぁ、どうせ終点まで降りないんだから、寝かせときましょ」
「無難な意見だ」
うさぎがそう言うと、衛はうさぎに賛成した。
 電車は多摩川を越え、神奈川県に入り、衛の通っている大学の別のキャンパスの最寄り駅を通過すると、左手の方に横浜ランドマークタワーが見えてきた。
「はるか姉さん。ランドマークタワーだ」
「なんかやっと、横浜に来たという感じだな」
菊名駅を過ぎると、電車は地下に入り、神奈川のターミナル駅、横浜駅に電車は滑り込んだ。
「うわ!すごい人」
JRや私鉄、地下鉄が乗り入れる駅だけであって、乗降客が半端ではない。おもわずほたるがびっくりして口走ってしまった。
「土曜日なのにすごい人」
まこともおもわず口走った。
「ここは、休日でも買い物客が利用するから、乗降客が多いんだと思うよ」
アルテミスが他の乗客に分からないような小さい声でまことに言った。
電車の扉が閉まると、また長いアナウンスが流れてきた。
〔本日もみなとみらい線にご乗車いただきましてありがとうございます。この電車は特急元町・中華街行きです。次はみなとみらい、みなとみらい、お出口は右側です。みなとみらいの次は、終点元町・中華街に止まります。日本大通り、馬車道には止まりませんでのご注意下さい〕
「へ〜、ここでみなとみらい線に入るわけだ。乗務員は交代していないのにね」
せつながびっくりしながら話した。
電車はみなとみらいを過ぎ、ようやく終点の元町・中華街に到着した。うさぎが「おなかすいた〜〜!!」と騒ぎ出したため、一行は中華街で昼食を取り、11人で5万円分の食事を平らげてしまった・・・。もちろん、ほとんどが一人の胃袋に入ったことは言うまでもないが・・・。
「は〜、食った食った」
「うさぎちゃん、女の子なんだからもうちょっと発言には注意した方がいいわよ」
亜美がうさぎに笑いながら注意した。
「さてと、パラダイス学園に行きますか。確か、元町商店街を通って、パラダイス学園のある山手に行くんだったわね?」
レイが美奈子に訪ねた。
「そうそう、でも、あそこを通るのはもう一つ狙いがあるのよ」
ふふ・・・、と笑いながら美奈子はレイに答えた。

「わ〜、ブランドものや貴金属を売る店がいっぱい!!」
「かなり場違いなところに来てしまった気もしないが・・・」
うさぎは目を輝かせ、衛はため息を付いた。いつのまにか籠から出されたルナ達も目を丸くしてる。
「すごいな〜。30世紀ではこんなところ来たこと無い」
ちびうさもびっくりしていた。
「さては美奈子ちゃん、ここで何か買う気?」
まことが美奈子に行った。
「あったり〜!!元町と言えば、高級バッグのK。それの安売りが今日なのよ!!」
「そんなお金一体いつから貯めてたんだ???」
アルテミスが呆れる。
「美奈子ちゃんずるい〜〜!!!」
うさぎがうらやましそうな声を出す。
「あんたは散々さっき食べたからいいでしょ??」
ちびうさはうさぎをたしなめる。
「あの〜、姉さん達とFへ行っていいでしょうか??」
ほたるがみんなに言う。
「あぁ、あの有名な洋服屋さんね。いいわよ〜、いってらっしゃ〜い」
亜美はほたるにそう答えた。

「なんかみんな、凄い量を買ってないかい??」
アルテミスは仰天した。みんなそれぞれ、服やら時計やらバッグやら財布やらあらゆるものを手当たり次第に買っていた。
「私なんか服を家に送っちゃったもんね〜」
うさぎはぺろっと舌を出した。
「大事に着ろよ・・・」
衛がどうやら買わされたらしく、ため息を付きながら話した。
「亜美ちゃんは何か買った?」
うさぎが亜美に聞く。
「これ、美奈子ちゃんと一緒にKへ行って買った財布」
「おぉ、あの亜美ちゃんもブランド力には撃沈・・・」
レイはびっくりした顔で財布を見つめていた。
「ダイアナは、スモールレディと時計を買いました」
どうやら、ちびうさもダイアナも時計を買ったらしい。
「もう、なにも話す気しないわ・・・」
さすがのルナもお手上げであった・・・。

 元町商店街から山手地区までは、商店街の脇道から坂を上ってすぐのところにある。その坂を目指していたちょうどその時、山手から元町に逃げるように走って、一人の女の子が降りてきた。
「どうしました??」
レイが素早くその女の子に聞く。
「パンサー・クローが・・・・」
「パンサー・クロー??亜美ちゃんを襲った奴だわ!」
美奈子がとっさに叫んだ。
「どこ?どこで襲われたの??」
うさぎが聞く。
「坂の上の、パラダイス学園です!」
「分かった!みんな行くぞ!!!」
逃げてきた女の子を、近くに通行人に介抱してもらって、セーラーチームは、山手への坂を駆け上がっていった。

 横浜市中区山手。外人墓地がある静かな高級住宅街の中に、キューティーハニーこと如月ハニーが寮生活を送っているパラダイス学園がある。いつもは静かなこの場所で、パンサー・クローの残党達が、ハニーに復讐するためこの学園を襲ったのだ。
「キューティーハニーはどこだ!?探し出せ!!」
パンサー・クローの手下達はハニーを探すが見つからない。とその時・・・。
「パンサー・クロー!探しているものはここよ!!」
パラダイス学園の屋上にキューティーハニーが現れた。そして次々にパンサー・クローの手下達がハニーによって倒されていく。
「ハニー、ライソニング・フレアー!!!」
手下達はハニーの必殺技をもろにうけ、消滅してしまった・・・。
しかし、ハニーは元町方面から来る、今まで感じたことのない何かが近づいてくるのを感じていた。

セーラーチームが坂を駆け上がり、パラダイス学園の前に来たとき、すでにパンサー・クローの手下達が学園の敷地の外で息絶えていた。そして、亜美がそっと正門から、中の様子をうかがった・・・。
「あれが、キューティーハニー・・・」
亜美が有栖川宮記念公園で会ったときは、暗くて全てを見ることはできなかったが、明るい時間に改めてみると、かなり格好のいいコスチュームを身にまとっていた。
「うわっ!」
少し遅れてきたうさぎが、ちょうど正門の前で派手に転んでしまった。それを、ハニーに気づかれてしまった。
「誰だ!!」
うさぎはハニーの一言にたじろいだ・・・。
「いや、通りがかりのものですぅ〜・・・」
うさぎはいかにも嘘という言葉を発してしまい、一同からため息が漏れた。
「嘘を言うんじゃない!そこに何人か隠れているのがわかる。あなた達は何者なの?」
「ここは、出て行くしかないんじゃない?」
まことが言った。
「キューティーハニー。私よ。有栖川宮公園で助けてもらった・・・」
「あの時の・・・。あの時私は関わるなと言ったはず。なのにあなたがなぜここにいるの?」
亜美はハニーの前に出ていき、ハニーの誤解を何とか解こうとした。
「あなたにお礼がしたかっただけ。あの人達はついでに横浜観光をしようと誘った私の友達だから、決して怪しいものじゃない」
「私の居所を知っているのは警察とパンサー・クローの残党だけのはず。あなたたちはパンサー・クローなの??」
「いやだから・・・」
亜美は必死になっていた。
「タ〜〜〜!!」
ハニーが亜美に向かって剣を出してきた。
「フラワーハリケーン!!」
後ろから、セーラージュピターが亜美を助けるため技を出してきた。
「まこちゃん!!」
亜美はびっくりして、ジュピターの方に顔を向けた。
「どうやら、この子は勘違いをしてるようだから、少々荒療治をしないとね。亜美ちゃん、変身して!!」
ジュピターは亜美に変身を促す。
「わかった。仕方ないわね」
亜美も不本意ながら変身することに決めた。
「マーキュリープラネットパワー、メイクアップ!!」
亜美は、セーラーマーキュリーに変身した。
「やっぱり、あなたたちは普通の人たちではなさそうね」
キューティーハニーは剣を構えた。
いつの間にやら、うさぎもエターナルセーラームーンに変身している。
「ムーンティアラアクショーーーン!!」
キューティーハニーの死角にいたセーラームーンが、ハニーにティアラを投げる。
「ハニーブーメラン!」
セーラームーンのティアラと、ハニーのブーメランが空中でぶつかる。
「げっ。これ以上強力な技を出したら、山手が吹き飛んじゃう!!」
セーラームーンは一歩引くことにした。
「ファイアーソウル!!」
マーズが、なるべくハニーを傷つけないように、弱めに技を放った。
「あ、熱い!!」
ハニーがたじろいだ。
ウラヌス、ネプチューン、プルート、サターン、ちびムーンは変身してはいるものの、自分たちの技が強力すぎるので、わざと戦闘に参加していない。衛は、セーラー戦士にお任せという状態だ。
「シャボンアクアイリュージョン!!」
マーキュリーも弱めに技を放った。
「キャーーーーー!!!」
ハニーが悲鳴をあげる。剣だけでは防ぎきれず、マーキュリーの技をもろに食らってしまった。
「クレッセントシャワー!!」
ヴィーナスがハニーにクレッセントシャワーを浴びせ、キューティーハニーは変身が解け、如月ハニーへとその姿を戻した。
「大丈夫ですか??」
マーキュリーはハニーを介抱した。
「あなたたちは一体何者なの・・・?私は、あなたたちの技を防げなかった。完敗よ・・・」
「私たちはセーラー戦士です。あなたと同じ、正義を愛するものです」
マーキュリーはハニーにこう告げた。
「そう。あなたたちが噂のセーラー戦士・・・。私がかなうわけないわね・・・。空中元素固定装置の力とあなたたちの力とでは、こうも違うものなのかもしれないわね・・・」
そういって、ハニーは気を失った。
「ハニーさん?ハニーさん!!」
マーキュリーはハニーを揺さぶり続けた。

ハニーは、はっと目を覚ました。
「ここは・・・?」
「全くハニーったら、無茶するわね」
「なっちゃん・・・!?」
「ハニー、頼むから無茶はしないでくれ」
「星児さん!?」
秋夏子と、青山星児がハニーの部屋でハニーの看病をしていたらしい。とそこへドアをノックする音が聞こえた。
「はい、どうぞ〜」
夏子が外にいる人を中へはいるよう促した。
「失礼します。あ、ハニーさん気が付かれました??」
亜美が笑顔で入ってくる。残りのメンバーも中華街で買ったのか、ほかほかの肉まんなどを部屋の中へ持ち込んでいった。
「ごめんなさい。あなたたちはてっきりパンサー・クローのメンバーだとばっかり思っていたので」
ハニーは亜美の顔を見るなり、さっきの非礼を謝った。
「いえいえ。私たちも何の連絡もなしに来たのが誤解の原因ですので・・・」
亜美もアポなしで学園に来たことを詫びた。
「そう言えば、まだあなたの名前を聞いてなかったわね」
ハニーが亜美にそう聞いた。
「水野亜美と言います」
「そう、いい名前だわ」
ハニーが言った。
「あっ、私月野うさぎですぅ。よろしくおねがいしま〜す」
「愛野美奈子です。セーラーVとは私のことです」
「木野まこと。よろしくね!」
「私は火野レイ。神社で巫女をしてます」
「私も月野うさぎ。でもちびうさって呼んでね!」
「天王はるかです。レーサーをしています」
「海王みちるです。一応、バイオリニストです」
「冥王せつなです。いまは文部科学省の部局にいます」
「土萌ほたるです」
「地場衛だ。よろしく!」
「みなさん、素晴らしい名前ですね!」
ハニーは笑顔になった。
「ダイアナです。あっ、しゃべっちゃまずかったかな・・・」
「うわ!?猫がしゃべった!?」
夏子と星児がぶっ飛んだのは言うまでもない。
その後、みんなは山手のレストランで食事をし、セーラーチームは横浜で一泊しハニー達と遊んだあと、十番街に帰ったと言うことだが、お金を出したのははるかと衛で、財布に季節はずれの木枯らしが吹いたのは言うまでもない。
(完)



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