海の風
さらりと吹いてきた海の風。
さらりと流れるうさぎの髪…。
静かに過ぎていく波の音。
「きれい…。」
何でだろう…。さみしい時は海が好きになるのよね…。海の音、海のにおい、海の
波、すべてがきれいに見えてくる。
今日はあまりいい天気とは言えなかった。小さな雲がところどころにが浮かんでる空模様は、まさに今のうさぎの心の鏡。
「いつも元気でも、たまにこういう所に一人で来たくなるのはどうしてかな」。
ちょっと不思議に思いたくなるうさぎ。自分の気持ちだってそんなに簡単にわかるわ
けじゃないものね…。自分に聞きたくなってしまうこと、いっぱいあるはずなんだけ
どね。時にはそれを心のどこかに閉まっているから、その大切な気持ちを見つけると
きは本当に少ないのよね。でも、ある時、自分でそれを見つけて、色々考えて見たく
なるよね…。
あっと言う間に時間は過ぎていき、もうすぐで太陽が沈んでいく時間になっていっ
た。さっきまで青だった水がどんどん朱に染まっていく。
「帰らなきゃ」って思ううさぎだったが、なぜか家のほうに体が進まない。何かにひきよせられるような感じで、この浜辺に佇んでいる。
たしか、もう二時間くらいここにいたような気がする。もしかしたら、もっと長かったかもしれない。
だんだん、太陽は海に飲み込まれていき、それとバトンタッチで、月が空に出てきた。だれもいない砂浜…、涼しい砂の上にすわり、大きな月がいつもとちがってかなり優しく、そして、悲しく見える。今のうさぎの心のように。
人も少ないし、この辺りには大きい建物も少ないからか、星たちもいつもより強く、そして、多くきらきらしてるような気がする。
何時になったのだろう…、うさぎはちらりと腕時計を見つめた。
「え〜?!もうこんな時間??お母さんに怒られる!早く家に帰らなきゃ!」
そう言って家に走っていく後姿を見つめ、月や星たちがくすくすと笑った…。