恋シイヒト endeimionT
子供の頃の夢を見た。
幼い俺の胸で、泣いていたヒトがいた。
金よりも、銀に近い色の長い髪と紫紺の瞳をしていた。
普段は、人々の尊敬と敬愛を受け崇められているのに
俺の胸の中で、泣く彼女はどこか儚げでまるで小さな女の子のようだった。
「許して・・・私の可愛い坊や・・・。」
俺の胸の中で、泣きながら何時も繰り返されるフレーズ・・・・。
「私の犯した罪のために、貴方に・・・・。」
幼い俺は、泣いているあのヒトに何も言えない。
エンディミオン・・・・優しい声で名前を呼ぶ。
ゴールデンキングダムの奥深くにあるエリュシオンと呼ばれる濃緑の木々に守られた聖域
その聖域に住む、美しく心と強い心でこの星をうちから守る使命を持つ巫女姫・・・。
母は祈りを捧げ、豊饒と豊かな実りと邪気の浄化を使命とした巫女姫だった。
巫女姫である母は、禁を犯した・・・・たった一度だけの過ち
漆黒の髪と深青の瞳・・・・ゴールデンキングダムの若き王だった。
心の疲れを癒しに、この地に訪れた王は巫女姫の美しさと優しさに魅かれた。
ささくれた王の心と体に、巫女姫の歌う声は全ての癒してくれた。
王は、巫女姫の知らない地上の話しをどんなにつまらないことでも語り聞かせてくれた。
二人は、「恋」と言うものに落ちた。
「結ばれては、いけない恋だった・・・。」
母は、泣きながら呟いていた・・・・・。
流れてゆく時間が違うもの同士であり、聖域の巫女姫である母は通じ合うことは許されない立場だった。
「でも、愛していたの。」
母が、幼い俺に許しを乞うように言っていた。
そして、俺はこの世に生まれた・・・・。
「あなたは、私の犯した過ちをその身に受けて生まれてしまった。」
巫女姫の母は、生まれたばかりのわが子の運命を見てしまった。
「許して、・・・・。」
母は、いつでも幼い俺に許しを乞い続けた。
ある日、母がいつものように俺の元に来た。
「エンディミオン、私を許して・・・。」
いつものように、泣いていない母ではなく巫女姫としての顔を持つあのヒトが言った。
「私は、自分の犯してしまった罪を償う時がきました。」
母の顔でない、あのヒトはしっかりとした声で告げる。
「私は、あなたの父上と愛し合えたことを後悔していません。どうか、あなたも自分の愛したヒトのことを後悔してはなりません。」
そういい残して、あのヒトは自らの血を持って地上の浄化をおこない命を終えた。
今なら、最後に母が伝たかったことがわかる・・・。
セレニティ―月の王国の王女である少女・・・。
どこか、あのヒト・・・・母を思わせる愛しい乙女・・・・。
かつて、母が父を愛したように俺も愛しているから・・・・・。
この恋は、後悔などしない。
たとえ、未来に俺が命を失うことになっても・・・・。
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