サマースノー


パパとママは、住む世界が違っていた

パパは、絵という世界にママと離れて行ってしまった

ママは、仕事という世界にパパと離れて行ってしまった

私は、二人のいない寂しさか逃げたくてお勉強に逃げ込んだ

満たされない・・・・・

心のどこかに、大きな穴が開いている

新月の夜星も見えない・・・・無限の闇の世界・・・・私の心の中

うさぎちゃん・・・私の初めてのお友達・・・無限の闇に灯った小さな光

私を優しく包み、明るい月の光で癒してくれる

「亜美に見せたいものが、ある」

パパが、葉書をくれた

パパの世界・・・・・東京のような賑やかさから隔絶された静寂な場所

風に揺れる樹々の葉が、奏でる音だけが無限に響き渡る

何故か記憶の底に眠るビジョンが、甦る・・・・・若い両親の姿

そして、パパのいる家の庭一面に咲き乱れた花・・・・・

サマースノー・・・・ママの大好きな花

静寂な闇の中で、月明かりに照らされた白い花・・・・・

さわさわ・・・・・・

暗闇の中を風が渡ると、白い花びらが無数に舞い上がる

ふわふわ・・・ふわりふわり

暗闇の中で、風に漂い花びらが舞う姿は季節外れの雪のように

サマースノーは、夏の雪なんだよ・・・・・

父が、スケッチしながら描く絵の中に母がいた

私は、そのとき初めて気づいた

パパとママは住む世界は同じなんだと・・・・パパの絵の中には、いつもママがいる

ママの心の中に咲くサマースノーの花の中には、パパがいる

サマースノー・・・・・二人を結ぶ夏の雪

それは、私なんだと気づいたとき声が聞こえた

「貴女は、みんなから愛されているのよ独りじゃないわ」

空を見上げると、優しい光をたたえた月が世界を照らしていた

そうだ、私はもうひとりじゃないんだ・・・・私には、うさぎちゃんやみんながいる

私の心の中には、満開のサマースノーの花が咲いている

花の中には、みんなの優しい暖かな光が満ち溢れている・・・・

私は、ひとりじゃない・・・・私は、愛に満たされている

涼やかな風が、私の中をかけぬけた



               あとがき

今回は、亜美ちゃんです。

亜美ちゃんといえば、天才少女・・・・でも、その天才ゆえに孤独な亜美ちゃん。

彼女の両親のエピソードは、原作のネヘレニア編ではじめて出てきます。

この作品のタイトルサマースノーは、実ははじめの設定では海の中に起こるマリンスノーをそう名付けた某番組のタイトルなんですがインターネットで検索したらなんと薔薇の品種につけられてる名前でした。

そこで、急遽設定を変更しパパが一人で暮らす高原の家ということにしました。

静寂な高原の夜に、風に舞う白い花びらは春に月の美しい夜にひらひらと散る

桜の花を白い薔薇の花びらに置き換えて見ました。