1999年のとある平和な一時
ここはキンモク星の王宮の中庭。小さな女の子が泣いていた。その子はヒーラー(明日香)の妹で、名は、美由紀といった。
美由紀は去年11歳のときに、はれて火球の護衛隊(セーラー戦士)になったのだが、失敗の連続で自分は戦士に向いていないのかと思い始め泣いていたのだ。
そんな時、後ろから声をかけられ美由紀が振り向くと、そこにヒーラーが立っていた。
「・・・・お姉ちゃん」(美由紀:その後は『美』で表す)
「また、失敗したの?」(ヒーラー:その後は『ヒ』で表す)
「・・・・・・・・・」(美)
ヒーラーに図星をつかれた美由紀は黙った。それを見たヒーラーはため息を吐いた。
「・・・・失敗したのね。失敗する度に泣いていたら、お姉ちゃんみたいな戦士になれないわよ。美由紀」(ヒ)
「・・・・だってー。他の二人は訓練の最中失敗していないのに、私だけー」(美)
美由紀がいう他の二人というのは、ファイター(美紀)の妹『胡桃』とメイカー(めぐみ)の妹『由香』のことだった。しかし、まだ泣いている美由紀に嫌気がさしたのか、ヒーラーは美由紀を抱き上げると、あやしながら言った。
「確かにお姉ちゃんも戦士になりたての頃は、失敗していたけど泣かなかった。『次の訓練は頑張るぞ』って自分自身に言い聞かせていて頑張ったからこそ、今お姉ちゃんがプリンセスの護衛隊としてここにいるのよ。だから美由紀も頑張りなさい。」(ヒ)
そして美由紀が泣き止んだのを確認すると、ヒーラーは美由紀を地面に降ろした。
「美由紀・・・・他の二人だって何回かは失敗しているはずよ。失敗するたびに泣いていたら、他の二人に笑われちゃうぞ。」(ヒ)
「・・・・うん。今度から失敗してもあまり泣かない。」(美)
「よし!よく言った!!」
ヒーラーは美由紀の頭を撫でた。そしてその後、美由紀が訓練施設に戻っていくのを見送った後、廊下の所でその光景を見守っていた火球・ファイター・メイカーの3人にヒーラーはこれで大丈夫というウインクをした。
「やっぱりヒーラーの妹を見ているとうさぎとダブるわね」(火球:その後は『火』で表す
「プリンセスもそう思ったんですか?実は私もそう思ったんですよ」(ファイター:その後は『ファ』で表す)
「私もそう思いました。」(メイカー:その後は『メ』で表す)
「プリンセスとファイターとメイカーにそう言われたんでは、元も子もないわ」(ヒ)
ヒーラーはでっかい汗をかきながらなげいた。
「それじゃ明後日になったら地球へ行きますよ」(火)
「はい!!」(ファ・ヒ・メ)
火球の言葉に三人が元気よく答えた理由は、四人が地球の大学『十番大学短大部』で歴史学を学んでいるからだった。
「一週間後に大学が始まりますからね」(メ)
「そうね。二学期になったら、もう少し歴史学の勉強頑張んなきゃ」(ファ)
「ちょっと大変だけどね」(ヒ)
「でも地球の歴史って面白いわね」(火)
四人は王宮の通路を歩きながら、今まで習った歴史のことを話していた。そして地球にいる仲間の話に発展していった。
はるかは現在ミュージカル女優として活躍中。みちるは大学に通いながらバイオリニストとして活躍中。せつなは東京湾天文台に勤務。ほたるは十番中学校一年生。衛は都内の病院で外科医として勤務。
まことは調理師専門学校で猛勉強中。レイはT・A女学院短大部で勉強中。亜美は十番大学短大部で医学のことを猛勉強中。うさぎは都内の専門学校でシャチやシロイルカのトレーナーになるために猛勉強中。美奈子は以外にも服飾デザイナーの専門学校で猛勉強中。
そしてその夜、ヒーラーの部屋の扉を叩く音がした。誰だろうと思い扉を開けると、そこに、ねまきを着て熊のぬいぐるみを抱いている美由紀がいたので、ヒーラーはびっくりした。
「どうしたの?美由紀」(ヒ)
「お姉ちゃん達、明後日地球に戻るんでしょ?だから今日ぐらい一緒に寝たいなぁーと思って」(美)
「・・・・しょうがないわねー。いいわよいらしゃい。この甘えん坊」(ヒ)
ヒーラーは美由紀を部屋に入れながら頭をなでた。そしてベットに入って寝るまでの間、ヒーラーは美由紀に高校の卒業アルバムを見せたり、地球での生活をきかせた。
その翌日、ヒーラーはファイターとメイカーに昨夜のことを話した。そうしたら二人も同じことがあったらしい。
「どうやら、あの子達三人で立てた計画みたいね」(ファ)
「一晩だけ一緒にいるというね」(メ)
「それじゃ私たち、三人の計画にまんまとはまったわけだ。」(ヒ)
「そういうこと」(ファ&メ)
そして地球に戻る日、兵士の他に妹三人組が見送りに来ていた。
「お姉ちゃん、もし地球で戦闘が起こっても無理しないでね。じゃないとまたバンパイアにされちゃうよ」(胡桃)
「くーるーみー!喧嘩売ってんのー?」(ファ)
「きゃー!!ごめんなさーい!売ってませーん!」(胡桃)
胡桃はファイターに睨まれ、とっさにすばやく兵士の後ろに隠れた。
「一生懸命勉強して、立派な戦士になって、お姉ちゃんの知力を努力して越してみせるから!」(由香)
「あらっ!その挑戦状受けてたとうじゃないの」(メ)
メイカーはにっこり笑って由香の頭をなでた。そして四人は地球に向かって出発した。
地球へ出発した四人を見送った兵士と妹三人組は、再び訓練施設へ戻っていった。その訓練施設ではシュミレーションによる訓練で、一応戦闘経験値をあげていた。
教官による話では『敵は実際、どんな攻撃を仕掛けてくるかわからない。だから気を抜
かないように!!』と言われているため、その言葉を頭の中に叩き込んで、戦闘訓練を受けていた。
そして訓練が終わって三人で仲良く話していた。
「地球ってどんな所なんだろうね。」(由香)
「お姉ちゃんの話を聞いていると、行きたくなるよね。」(美由紀)
「うん、行きたくなるよね。」(胡桃)
三人で仲良くぺちゃくちゃ喋っているのを、遠くから教官や怪我をした時に見てくれ
る医師が見守っていた。
「あっ!そういえばねお姉ちゃんからね、地球の高校の卒業アルバムね昨日借りてき
たの。」(美由紀)
「えっ!?それじゃ見よう!」(胡桃)
最初三人は三学年全員が写っているページで、お姉ちゃんを探せゲームを開始して
十分後やっと三人を見つけた。何故見つけるのに時間がかかったのかというと、三人は
何と髪形を変えていたからだった。
「何で個人写真や集合写真を撮る時に限って、髪型を変えるかな?これってイジメ?」(由香)
あからさまに由香は不機嫌そうな声を出した。その三人の髪型というのはこうだっ
た。
めぐみ(大気)は前髪を下ろして後ろで一つのお団子にしていて、明日香(夜天)
はポニーテールにしていて、美紀(星野)は髪留めを外していたからだった。
そしてその後、卒業アルバムを一枚ずつ開いていくと部活動風景、授業風景、三年
間の行事風景などが写っていた。そこでも三人は、例のお姉ちゃんを探せゲームをして
いた。
「次の写真は林間学校のだ。」(胡桃)
「あっ!プリンセスも一緒に写ってる。ということは、プリンセスも一緒に行った
んだね。」(由香)
「お姉ちゃんから聞いたんだけど、登山する時斜面が急で結構きつかったんだって。でも、山頂で食べたお弁当美味しかったんだって。」(美由紀)
「でもね由香のお姉ちゃん、下山途中に足滑らせて先生を蹴っちゃったんだって。」(胡桃)
「それ、聞いた。お姉ちゃんの中では、懐かしい思い出なんだって。」(由香)
そんなこんなで時が過ぎていった。
一方地球では、皆火川神社に集まっていた。
「へー、美紀ちゃんたちに妹がいるんだ。」(うさぎ)
「居るのよこれが。もしかして以外だった?」(美紀)
「以外ですよね。しかも同じ名前なんて・・・。」(ほたる)
「妹さんの名前、なんていうの?」(みちる)
「あたしの妹の名は『由香』、明日香の妹の名は『美由紀』、美紀の妹の名が『胡桃』。ついでに言うとすべて漢字でこんな字・・・」(めぐみ)
めぐみは紙に書いて見せてくれた。
「やっぱり妹は可愛いでしょ?」(せつな)
「三人とも反抗期だけど可愛いよ。今は訓練施設でシュミレーションによる戦闘で経験値を上げているけどね」(明日香)
「だが、シュミレーションなんかで戦闘経験値が上がるのか?」(はるか)
「シュミレーションといっても結構リアルなのよね。恐いぐらい。」(美紀)
「妹が機嫌損ねたら、なだめるの大変?」(亜美)
亜美は、三人に聞いてみた。すると三人はでっかい汗を浮かべてため息を吐いて無言になった。口には出さないがそれほど大変なんだろうなーと、思っていた。
「ところで、妹さんの写真持ってる?持っていたら見たいなあたし。」(レイ)
レイは話を変えて三人の写真が見たいといった。すると三人はそれぞれ手帳を取り出して、妹の写真を見せてくれた。
「結構可愛いー!あっそうだ美奈子ちゃん服飾デザイナーの勉強しているじゃん三人の妹の身長さえ聞けば、洋服選びぐらい簡単じゃない?」(まこと)
「簡単だけどさー・・・もしかしてまこちゃん、皆でお金出し合って三人の妹さんたちに地球の服プレゼントしようということなの?」(美奈子)
「まあまあ美奈、猛勉強したかいがあったというチャンスじゃないのか?」(アルテミス)
まことにズイっと寄った美奈子を、彼女の肩に乗っているアルテミスがなだめた。
うさぎは妹たちの身長を聞き始めている。そして何を思ったのか、突然キンモク星に遊びに行きたいと言いだした。
うさぎの肩に乗っているルナは溜息を吐いた。
「うさぎちゃんてば・・・でも、いい勉強になるかも・・・」(亜美)
「亜美ちゃんまで・・・」(ルナ)
「是非、いらしてください。歓迎致します」(火)
「わーい!じゃ、決まりね!」(うさぎ)
「それじゃ、妹たちの身長を教えるわね」(美紀)
そして時が過ぎていき、地球では後二日というところで冬休みに入ろうとしていた。キンモク星では、地球に居る火球から『地球のセーラー戦士と一緒に、二日後に帰ります。』というような通信が届き、それは妹たちにも知らされた。妹三人組は、地球のセーラー戦士と会うことをドキドキしながら待っていた。
そして、地球で冬休みになり、火球たちが地球のセーラー戦士を連れてキンモク星に帰ってきた。衛とはるかとせつなは休暇を取って来ていた。そしてそこでうさぎ達と人間体になったルナとアルテミスは、ファイター達の妹胡桃、由香、美由紀の三人を紹介してもらった。。
「こんにちは、胡桃ちゃん、由香ちゃん、美由紀ちゃん」(ムーン)
「こっこんにちは」(胡桃、由香、美由紀)
ちょっと緊張しているのか、多少声を上擦らせながら慌ててお辞儀した。
「礼儀正しいのね妹さんたち」(マーキュリー)
「緊張するといつもお辞儀するのよ。」(メイカー)
メイカーは由香の頭をなでながら言った。
「あっ!そうだ私たちからプレゼントがあるの」(ジュピター)
「ここに居るビーナスが服飾デザイナー目指していて、胡桃ちゃん達の写真を見ながら選んだの。」(マーズ)
「これが胡桃ちゃんので、これが美由紀ちゃん、そしてこれが由香ちゃんの。」(ビーナス)
ビーナスは一つずつ、胡桃たちにプレゼントの袋を渡していった。
「ありがとう!!ねえ、お姉ちゃん早速着てきていい?」(美由紀)
他の二人を代表して美由紀がお礼を言い、ヒーラーのほうを見てたずねた。
「いいわよ。着てらっしゃい」(ヒーラー)
「二人とも行こう」(美由紀)
ヒーラーが美由紀を見てにっこりしながら言うと、美由紀・胡桃・由香はそれぞれ自分の部屋へ猛ダッシュでかけて行った。
「ずっ、随分と嬉しそうですね。服を貰ったことが・・・」(サターン)
「嬉しいとダッシュでかけていくのがあの三人の癖なのよ。でも、あれが可愛いのよね」(ファイター)
サターンはでっかい汗をかきながら言った後、ファイターは少々呆れた様子で言った後ちょっと嬉しそうに言った。
「皆さん王宮の中ご案しますね」(火球)
「ええ、お願いするわ」(ルナ)
火球とスターライツの三人が王宮を案内していると、胡桃たちが先ほどムーンたちがプレゼントした服を着て出てきた。
「結構似合っているじゃないか」(ウラヌス)
「ほんと、似合ってるわね。」(ネプチューン)
「洋服の他に、ねまきもありがとう」(由香)
「可愛い星柄のねまき」(胡桃)
「ビーナス、洋服の他にねまきもいれていたんですか?」(プルート)
プルートは洋服だけかと思っていたので、ビーナスに聞いた。
「赤・黄・青の色別の物なんだけどね。ついでに言うと在庫処分で結構安かったんだ。」(ビーナス)
ビーナスは少し笑いの入った口調で、こめかみの部分をかいた。
そして王宮の案内が終わり、中庭でファイター達の妹に、イルカの持っている玉の色が違うネックレス。可愛いピアス。シャーペン&シャー芯セット。可愛いノート9冊。などをプレゼントをした。
そして、ウラヌスからは自分の出演するミュージカルの公演があるから、見に来てとか、ムーンからは毎日のようにシロイルカのショーがあるから、見に来てねと言われた。
更には、ムーンたちが地球に帰るまでの4日間、ウラヌスからハンデ付きで、剣の稽古をしてもらった。マーキュリー&メイカーからは、勉強を教えてもらったり、夜には季節外れの怪談話をして、いろいろ楽しんだ。
そしてムーンたちが地球に帰る日がやってきた。
「ありがとうございます!楽しかったです」(胡桃)
「いただいたプレゼント、大事にします!」(由香)
「また、来てくださいね!」(美由紀)
「もちろんよ!でも、今度は地球にも遊びに来てね!面白いところ、いっぱい案内するから!」(ムーン)
三人の妹たちは、いつか地球に遊びに行くことをムーンたちに約束するのだった。
END
