もう一人の自分
〜そして月の輝き〜
なんだろう?
真っ暗な・・・とても暗い。
ここは何処?
『オマエハダレダ』
わたしは、土萌ほたる。
あなたは?
『ワタシ?ソレハオマエガ、イチバンシッテイルハズ』
え?
『ワタシハ、モウヒトリノオマエ。オマエニケサレタモウヒトリノオマエ。』
まさか・・・
そんな。
『ソウ。ワタシハ、ワタシノナハ・・・ミストレス9。』
あなたは、私が。
『タシカニアノトキワタシハキエタ。ダガナガキノアイダユウゴウシテイタオカゲデワタシハオマエニナレタノダ。』
なにを・・・何を言っているの私は、土萌ほたる。
土星を守護にもつ沈黙の戦士セーラーサターン。
『ソシテ、ミストレス9デモアル。』
違う。
『チガワナイ。オマエノココロニスミツイテイル・・・チイサナ『ヤミ』ソレコソガワタシトイウアカシ。』
やめて!
『モウイチド・・・ソノ『ヤミ』ヲ、トキハナテ。』
いや・・・。
『サァ。『ヤミ』ニスベテヲユダネロ。』
やめて。
『サア!!イマイチド、ワタシトトモニ!!!!!』
いやああああああああああああ!!!!
ガバァ
「ハァ、ハァ、ハァ。」
なに、今の。
夢・・・だったの。
辺りを見回すと、見慣れた自分の部屋があるだけ。
着ているパジャマは、ぐっしょりと汗で濡れている。
ほたるの額にも汗が滲んでいる。
よほど、恐ろしかったのだろう。
あれは・・・本当にただの夢?
暗い、おぞましいほどの深い闇。
あそこで目を覚まさなかったら・・・呑みこまれていた。
もし、呑まれていたら?
私は本当に、ミストレス9になっていたの?
考えれば考えるほど、彼女の心は恐怖に支配されていった。
「怖い。」
・
・
・
月野うさぎは、火川神社に向かう路をルナと共に歩いている。
「はあ〜あ。どうして期末試験なんてものがあるんだろ。」
「また、つまんないこと言って。いい!!うさぎちゃん・・・。」
毎度おなじみ、ルナのお説教が始まる。
うさぎは『はいはい。』と言いながら適当に聞き流している。
今日は試験の勉強会をいつもの五人ですることになっている。
はあ〜、またレイちゃんに『こんな問題もわかんないの〜。』とか言って馬鹿にされる。
でもでも、ちゃんと行かなきゃ。
今度赤点とったら、お小遣い50%カットってママに言われてるし。
そんなことを頭の中で考えながら歩いていると、見知った少女の姿が見えた。
あれ、あの子は・・・
なぜかうさぎは、気になった。
自分が知っているあの少女の姿と何か違うような気がして・・・。
なんだろう・・・この感じ。
気がついたら、うさぎは走り出していた。
「あ、ちょっとうさぎちゃん!」
「ごめんルナ、皆には適当に言っておいて。」
どうして・・・あんな瞳をしているの?
・
・
・
わたしは、何処に行こうとしているんだろう?
ただじっとしていると、一人で居るとおかしくなってしまいそうで・・・
公園。
暗い瞳をした少女が、よろよろと歩いていた。
そして再び聞こえて来る。
『ヤミ』の声が・・・
『ドウシタ・・・ナゼワタシヲコバム』
「ううっ・・・」
『コワイダロウ?ワタシヲ『ヤミ』ヲウケイレレバ、ソノキョウフカラモトキハナタレル』
怖い。
苦しい。
『モウラクニナリタイダロウ?ユックリ・・・・ネムルガイイ』
『ヤミ』が少女を呑み込んでいく。
意識が遠のき、視界がぼやける。
もう・・・だめ。
「ほたるちゃん!」
誰かの声。
それと同時に、景色が変わって元の公園に戻る。
だれ?
「・・・・うさぎ、さん。」
目の前に居たのは、うさぎだった。
「どうして?」
まだ意識がハッキリしない状態でほたるは呟いた。
「あ、うん。あのね、さっきそこで見かけたとき様子がおかしかったから気になっちゃって。」
言いながらうさぎは、ほたるに歩み寄る。
「こないで!!」
拒絶の言葉。
その言葉からうさぎが感じたのは『恐怖』だった。
その瞳と、その震える声、すべてに恐れを抱いているかのような。
「おねがい・・・こないで・・・・ください。」
ぺたりとその場の芝生に座り込んで自分の肩を抱き、震えだしてしまった。
うさぎは歩みを止めなかった。
どんなに拒絶されようとも・・・
「あ。」
ほたるは、なおも拒絶の言葉をぶつけようとするが
それは、彼女の小さな声に代わった。
「大丈夫。大丈夫だから・・・」
うさぎは、ほたるを抱きしめた。
優しく。
それだけ言って、うさぎは口を開かない。
なにも聞かず。
ただ、優しく抱きしめるだけ・・・
たったそれだけのことなのに、ほたるはどうしようもない安らぎを感じた。
言葉はいらない。
そして・・・ほたるの意識はまどろみの中に消えた。
『サア、ワタシトイッショニ・・・』
私は・・・
『オマエハワタシダ、ノガレルコトハデキナイ。』
違う。
『ナニ?』
私は私、土萌ほたる。
あなたじゃない。
『ナニヲイッテイル。オマエハワタシダ。』
その時、回りの景色が変わり、宇宙・・・月が現れた。
あたたかい、優しい輝きを宿した星。
『ナンダ・・・ナンナンダコノヒカリハァァァァァァァァァ』
『ヤミ』が消えていく。
代わりに現れたのは、月を背負って静かに立って柔らかな笑みをしている女神。
白いドレスを着て、金色の髪をした・・・女神。
「大丈夫。あなたの怖れも、闇も私が包んであげるから・・・・今はゆっくり眠りなさい。」
月の輝きがほたるを、優しく包んだ。
先程の公園の芝生。
そこには、あたたかな微笑をしたうさぎと、彼女の膝を枕にして眠るほたるが居た。
ほたるは安らかな笑顔をして、静かな寝息をたてている。
うさぎは、ほたるの髪を優しく撫でた。
「ありがとう・・・・うさぎさん。」
「うん? 私?・・・どんな夢を見てるんだろう。」
これは余談だがうさぎはこの後、期末試験の勉強地獄と
レイちゃんア〜ンドルナのお説教が待っているということは
うさぎは知らなかった・・・・
あとがき ども、はじめましてF&Gというものです。
さてこの話ですが、ほたるちゃんとミストレス9の葛藤を書いたものです。
で、ほたるちゃんを助けるのは当初の予定では、ちびうさにしようとしていたのですが
それではなんだか在り来たりな物になってしまうような気がして、うさぎにしました。
どうでしたでしょうか?
やっぱ・・・・駄目ですかね。
ま、まあ、とりあえず感想のメール等をお待ちしています。
F&G (fuukun@mwb.biglobe.ne.jp)